藤岡幸夫

日本フィル オールスター・ガラ

3/2(土) 18:00~ オーチャードホール
日本フィル オールスター・ガラ

指揮  : 藤岡 幸夫

予習もせず曲目も頭に入れないまま軽い気持ちで出かけたコンサートだったが、思いのほかいい気持ちになれたのでメモを。

2時間40分という長い時間だったが普段の定期演奏会では聴けないような、室内楽やヴィヴァルディの曲もあり、退屈しなかった。

音楽として一番印象に残ったのはラベルの室内楽だった。直前のモーツァルトなどの古典に耳が馴染んだ後にラベルを聴くと、まるで乾燥した北風が突如湿った南風に変わり木々が芽吹いたかのようだ。ラベルらしいふわっとした弦の和音とハープや木管の響き合いがオーケストラであるかのようにも感じ、いい曲だと思った。

いちばん日フィルらしい演奏は、吉松さんの曲かな。演奏後半の華やかな音がとても快適だった。やっぱり日フィルは現代曲が似合うんじゃないかな。

最後のフィンランディアには心が暖かくなって、思わずジーンときた。
今の日本の経済状況、被災地の方々、そして日フィルの公益法人化の状況など、大変な世の中だからこそ今の自分にしかできないこともある、がんばれる、そんな勇気やらささやかな希望やらを感じてしまった。歳かな?合唱の方々がチケットを買って客席から演奏に参加してくれる、というのもとても日フィルらしいいい企画だった。自分は1階席のいちばん後ろ、野球でいえば外野席だ。寝転んでビール飲みながら野次飛ばす席だがつい本気でに応援してしまった感じだ。オーケストラや合唱の方々と一緒に歌えるなんて、ちょっと贅沢な体験だった。インキネンさんのシベリウスチクルス、真面目に聴いてみよう、という気になった。感謝。

色々な作曲家の曲を一度に聴くと、それぞれの作曲家ごとに音の色があるのがわかる。何故かスピーカーの音ではわからない不思議な感覚。ラベルは初夏のむせ返るような新緑の色、ブラームスは冬の湿った石畳の色。それらは和音だったり旋律だったりするし、もちろん感じ方は人それぞれなのだろうけど、そういう音をもっとわかりたくて耳をすますし、作曲家の生きた時代を知ろうとする。自分にとってはそんな音の色を強く感じさせてくれる演奏がいい演奏なのかもしれない。

今回は1階席の一番後ろで天井も低く、席がステージから遠かったので迫力とか音の生々しさとかは感じることはできなかった。サントリーホールの指定席とはまるで環境が異なるので比較はできないけど、なぜか弦の音が他の楽器に比べて小さく聞こえたのは残念。妻も同意見だった。弦楽器だけの演奏の時はよく言えば音がまろやか、悪くいえばオブラートがかかったような印象を受けた。

満たされた気持ちでホールを出ると、強い北風に縮みあがった。せっかくいただいた勇気や希望だけど、早くも現実に負けそうだ。

note曲目:
コープランド   市民のためのファンファーレ
モーツァルト   協奏交響曲 K.297bより 第1楽章
ヴァンハル    コントラバス協奏曲より第1楽章
ラヴェル      序奏とアレグロ
ヴィヴァルディ  2本のトランペットのための協奏曲
            RV.537より 第1楽章
パウエル     ホルン協奏曲より 第1楽章

モーツァルト   オペラ《魔笛》より 序曲
モーツァルト   オペラ《魔笛》より 「おいらは鳥刺し」
ビゼー       オペラ《カルメン》より「闘牛士の歌」
ブルッフ      ロマンス
ダニエルソン   カプリッチョ・ダ・カメラ
吉松隆      トロンボーン協奏曲《オリオン・マシーン》より
           第1楽章・第2楽章
ブラームス    ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲より
            第3楽章
シベリウス 交響詩《フィンランディア》


七つの海越え響け
遥かの国の人へ
ふるさとの野に歌える
私の希望こそ
世界のすみまで同じ
平和への歌声

青き空の色深く
木立も草も光る
わが祖国よ 若者よ
他国の山もまた

同じ光に栄えるを
ともに願い歌え

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藤岡さんのカルミナ・ブラーナ

9/10(土) 18:00~ 横浜みなとみらいホール
日フィル 第270回横浜定期演奏会

リスト ピアノ協奏曲第2番 イ長調
オルフ カルミナ・ブラーナ

指揮: 藤岡 幸夫
ピアノ: ヴァディム・ホロデンコ
ソプラノ: 安井 陽子
テノール: 高橋 淳
バリトン: 萩原 潤
合唱: 日本フィルハーモニー協会合唱団
児童合唱: シンフォニーヒルズ少年少女合唱団


 いいホール、いい演奏。2週続けていい思いをした。最初から最後まで背筋がゾクゾクしっぱなしで最後はコーフンして鼻水が止まらなかった。

 この演奏会の前に学生時代にお世話になったクラシックギターの仲間の演奏会に久しぶりに立ち寄った。アマチュアだからひとりひとりの技術的な問題があるにしても、たった数本のギターで合奏しただけで音が揃わずお互いの音を曇らせてしまっているのがもったいなかった。反対にプロだからと言ってオーケストラでいい演奏をするのは簡単ではなさそうだ、と改めて思ったりもした。しかもカルミナ・ブラーナは大編成のオーケストラに加えて独唱と合唱が加わるのだから神業だ。


 アマチュアの演奏と比較したからではないが、今日もいい演奏だった。出だしこそオーケストラも合唱も固くなって音量が少し足りないかな?と感じたものの、曲が進むにつれてどんどん迫力が増してきた。

 まずすごいな、と思ったのは指揮者の藤岡さん。変化に富んだ各部分のテンポは指揮者の頭の中に刻まれているのだろうか。自宅では名盤といわれるヨッフム指揮の1967年録音のCDを聴いていたが、自分の中では今日の演奏のほうが良いと感じるくらいだ。ベートーベンの交響曲を聴いているような、リズムをしっかり刻んだ質実剛健な響きも心地よい。独唱の伴奏、合唱の伴奏、オーケストラ中心で鳴らすとき、それぞれの音量がコントロールされお互いを邪魔していない。演奏の一体感、ってこういうところに感じる。

 独唱の方々も素晴らしい。ソプラノの甘い歌声と迫力のある高音、酔っ払いテノールの生々しくも張りのある声、歌う音域が広そうなバリトン。合唱は少年少女も含めて楽譜を見ていない。全部覚えたのだろうか。たしかラテン語だったはずだけど。

 ベートーベンのように内証的に厳しく自分を見つめて苦悩から歓喜へと向かう昔ながらの交響曲と違い、人生楽あれば苦もある、酒好きも女たらしもそれも人間の生き様なんだ、そんなメッセージを感じる曲だった。生を聴いて初めてこの曲の良さを感じることができた気がする。

 前半のリストもいい演奏だったのですこしだけ。ピアノが骨太で迫力があった。後半のカルミナ・ブラーナですっかり印象が薄くなってしまい、独奏者がかわいそうでもあった。

 ホールについて。席が取れたのは3階席真ん中の一番後ろの方だった。直前に壁があって身を乗り出さないとステージが見えない。NHKホールの3階席と比べるとずいぶん高い位置だ。ウィーン国立歌劇場で桟敷席からステージを見下ろしたような、そんな感覚。響きはサントリーホールのような華やかな反射音ではなく上品さを感じた。その分、それぞれの楽器の生の音がこちらまでびゅんびゅん飛んできて距離を感じさせない。リストのチェロのソロやカルミナ・ブラーナの独唱など小さい音でもとても良く聴こえた。サントリーホールの後ろの方のような疎外感も感じない。いいホールだな、と思った。でももう少し椅子の前の壁を低くしてください。

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