下野竜也

下野さんの黛・林・三善・矢代 日本の現代音楽

2015/5/15(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第670回東京定期演奏会

黛 敏郎     フォノロジー・サンフォニック -交響的韻律学-
林 光      Winds
三善 晃     霧の果実
矢代 秋雄   交響曲

指揮  : 下野 竜也

プレトークに間に合うように、カラヤン広場を走り抜けた甲斐があった。下野さんの語りは魔術師のようだ。吸い込まれそうになる。指揮者として、演奏する曲とどのように向き合っているのか、何を感じているのか、飾り言葉なくストレートに聞けたように思う。敗戦直後の日本で4人の作曲家が感じたことに寄り添い、同じ日本で同じ時代を生きた作曲家の音楽を楽しもう、というメッセージを強く感じ、演奏を聴きたい気持ちが高まった。演奏も素晴らしかったのは、日フィルの団員の方々も下野さんの魔術にかかったからだろう。

一番感動したのは矢代さんの交響曲。あー、もう一度聴きたい、って思うことはこの手の音楽ではそう多くない。日本人の匂いのする旋律やリズムの美しさは世界に誇れると思う。3楽章や4楽章は大好きなメシアンの影響を強く感じたし、1楽章冒頭はラヴェルの影響か。フランス音楽の影響を感じつつも3楽章冒頭のイングリッシュホルンとアルトフルートのソロは幻想的日本のイメージ。もっと世界中で演奏されればいいな、と思った。

次によかったのが黛敏郎さん。過激さの中にも日本の美しさを感じた。

林さんと三善さんは興味深くはあったが感動するまでには至らなかった。事前に録音を入手して予習できたのは黛さんと矢代さん。予習できた曲の印象が良かったのは、たまたまだろうか。

どうでもいいことだが、下野さんの指揮はわかりやすい、と感じる。カッコつけることなくシンプル、悪く言えばダサくて朴訥。また最後に演奏者を立たせる場面があるが、楽器の真似が上手いためか的確に立たせたい人を立たせているように見える。これを見る限り、演奏中の指示もわかりやすいのではないか、と想像する。それはつまり的確に指揮者の意思が演奏者に伝わるということだからいい演奏につながってもおかしくない。演奏している日フィルの団員さんに感想を聞いてみたいものだ。

矢代さんの交響曲との出会いとなった、いい演奏会だった。
下野さんの今後のますますのご活躍を期待しています!!ブラボー!

bell

|

下野さんの日本の現代音楽

7/14(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第642回東京定期演奏会

戸田 邦雄  合奏協奏曲《シ・ファ・ド》
山本 直純  和楽器と管弦楽のためのカプリチオ
黛 敏郎   弦楽のためのエッセイ
松村 禎三  交響曲第1番

指揮  : 下野 竜也

山本さんの曲と松村さんの曲が面白かった。

特に山本さんの曲は、筝、三味線、尺八、和太鼓などの打楽器、それからドラムスやギターなどのポップスに使う楽器、がオーケストラに交じり合い、時に前衛的な現代音楽に、時にノスタルジックな昭和のポップスに、時に日本の祭りの音楽に、次々と豹変しながら進んでいく、日本のごちゃまぜ文化そのものを表現しているようでとても楽しかった。オーケストラと「スペシャル楽器」との相性もとてもよく感じた。こんなに違和感がないものなんだ。下野さんの指揮がよいのか、不思議な一体感もあったと思う。興味深い曲であり、素晴らしい演奏だった。

曲については、山本さんの人柄なり現代音楽に対する思想なりを感じ取ることができる素晴らしい曲であると思った反面、ドラムスや和太鼓?(私の席からはステージの影になって見えなかった)の長いソロ、前面で演奏される筝、三味線、尺八のソロ、など次々移り変わるため、焦点が絞られずなんとなく散漫な感じもした。

松村さんの曲は、事前に録音を入手して聴いていたため少し聴きやすかった。弦の音がとても美しくかっこよかった。山本さんの曲同様、オーケストラの一体感を感じた。いつもはにぎやかな楽章が好きなのだが、この曲に関しては何故か2楽章がとても気に入っている。フルートの長いソロから始まり静かに進んでいくのを聴いていると冬の荒涼とした荒れ野を思い出す。なんとも日本的、日本人でないと作れない曲だと思った。

下野さんの指揮の姿はとても実直で優しく、お人柄が出ているなぁ、と感じた。プレトークでの優しく丁寧な語り口は好感を持てた。読響のブルックナー4番では金管のミスの多さにがっかりさせられたが今日の演奏は素晴らしかったと思う。

黛さんの曲は妻がお気に入りのようでした。徐々に重なっていく弦の美しさ。

戸田さんの曲はバクスイでした。昨夜飲み過ぎたかな?

|

下野さんと読響のロマンティック

7/19(火) 19:00~ サントリーホール
読響 第506回定期演奏会

ヒンデミット   《さまよえるオランダ人》への序曲
ヒンデミット   管弦楽のための協奏曲 作品38
ブルックナー   交響曲第4番《ロマンティック》(ハース版)

指揮  : 下野竜也

初めての読響を聴き慣れたサントリーホールで楽しむ機会を得た。

2階のA席。センターの後ろの方だった。ステージがまるでテレビの中のように見える。
「オランダ人」では弦楽合奏が左右に華やかに広がり、うわ~いい響きだなぁ、って思った。一方、「ロマンティック」では強い音の残響が他人事のように自分よりもずいぶん前で響いている。まるで2階最前列の前に透明のカーテンが引いてあるようだ。いつものステージ真横の席では残響の中にいるのに今日の席は残響の外から聴いている感覚。生の迫力を取るか、左右に華やかに広がる音の響きを取るか。私は指揮者と演奏者の息遣いが感じられるようないつもの席がいいなぁ。

「ロマンティック」では激しさと静けさ、野蛮さと繊細さのコントラストが強く出ているのを感じた。特に4楽章は引き込まれる演奏だった。

残念だったのはホルンなど金管だった。目立つところで音が外れたりテンポがずれるように感じたため気になって集中できない。多少のミスは生演奏だから仕方ないとしても今回は多すぎに思う。プロなのだから最低限楽譜に書いてある音を正しく出すところからスタートして欲しい。以前ブロムシュテットさん指揮のN響で同じ曲を聴いたがもっとひどかった記憶がある。日本のオーケストラでは満足できる演奏は聴けないのだろうか。きっとホルンはとても難しいのだろうが、技術的に演奏できないなら取り上げなければいいのに、とも思う。

木管は、趣味の問題かもしれないが、フルートさんとオーボエさんの音は日フィルのほうがなんとなく好きだな、って思った。

ヴァイオリンはじめ弦楽器も少し物足りない。低音は渋めの音でずいぶん響いていたが高音は管楽器に隠れてよく聴こえない。聴こえても少し固めの音で好きになれなかった。4楽章半ばに弦のみの合奏でかっこよく響くところがあり密かに楽しみにしていたが、迫力はあったがN響や日フィルで感じる繊細な美しさは感じることができなかった。

「ロマンティック」の4楽章を除く全体で気になったのは、強い音の時に合奏の美しさを感じることができなかったこと。音量だけではなく調和やバランスの問題なのだろうか。

このように「ロマンティック」は特に初めて聴くオーケストラだと悪い印象を持ってしまうようだ。しばらくこの曲は生で聴きたくないなぁ、って思った。前半のヒンデミットがとても良かっただけに残念だ。もし別の曲だったら読響に対しての印象も違ったものになっていただろうと思う。

そういえば3楽章の終わりに「ブラボ~ッ!?」と叫ぶオヤジがいた。お陰で4楽章の最後は確信犯的「ブラボーオヤジ」は黙り、ゆっくり聴くことができてよかった。あの恥ずかしい「ブラボ~!?」は録画ではカットできるのかな、なんて余計な心配。

なんだかんだ言っても、やはり生の演奏会はいい。
なんだかんだ言っても、大きな満足感に満たされて家路に向かう。
素敵な平日夜の演奏会でした。

|