井上道義

井上さんのショスタコーヴィチとサン=サーンス

2014/1/25(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第657回東京定期演奏会

サン=サーンス 《糸杉と月桂樹》より「月桂樹」作品156
ショスタコーヴィチ チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 作品107
サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調 作品78《オルガン付き》

指揮  : 井上 道義
チェロ : タチアナ・ヴァシリエヴァ
オルガン: 大平 健介

今回は妻が金曜日に振り替えたため独りで聴きに行った。そんなときに感動的な演奏を聴いてしまうと話し相手がいなくて寂しいものだ。

サン=サーンスの「3番」は今までに何度か聴いているけど、一番胸に響いた演奏だったと思う。「月桂樹」も良かったが、「3番」では楽章が進むにつれオルガンとオーケストラの音がきれいに混ざっていく。最終楽章のフィナーレは両者の音がホール全体に響き渡り身体全体が包まれる感じだ。この曲はオルガンが主役か、オーケストラが主役か。今日の演奏の答えは「オーケストラ、とオルガン」(オーケストラが主)。

「月桂樹」もいい曲だった。こんなにカッコいい曲をなぜ今まで聴く機会がなかったのか。オペラの序曲のように、今日の演奏会への期待を煽ってくれる。最初はイマイチ揃ってないな~って思ったけど、オルガンのせいもあり華やかで元気で迫力のある曲に心が沸いた。

「チェロ協奏曲」も、うーんいい曲だ。と改めて感じさせてくれる演奏だった。独奏はもちろんだけど、今日のお手柄はオーケストラだった。タチアナさんのチェロが前に出るところはぐっと音量を抑えてチェロを引き立たせる。反対にオーケストラが前に出るところは、ピッコロ、フルート、ホルンなど尖った音で曲全体の何か暗い部分を表現する。私好みの演奏だった。金曜日の演奏はホルンがいまいちだったと妻から聞いていたのだが今日は素晴らしかった。

弦の音も好印象だった。特に「チェロ協奏曲」ではロシアの湿った土を連想させた。特に2楽章はよかったな。尖った管楽器と好対照だった。

実はこの曲はタチアナさんの演奏で以前聴いている。2012年5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで、パリ室内管弦楽団との演奏だ。その演奏自体はすっかり忘れてしまったが、自分で書いていた文章を見ると今回同様好印象だったようだ。今回も美しい音色と超絶技巧にすっかり引き込まれた。3楽章のソロも素晴らしかった。欲を言えばこの曲はもっと毒々しいギコギコした音の方が好きかな。この点も前回と同様の感想。

井上さんといえば、マフィアのボスみたいで怖いし、ギラギラして男臭い演奏するイメージがあってどちらかというといい印象がなかった。でも今回の演奏は細かいところに心を配り曲の中の小さな部品ひとつひとつの表現を大切にしている繊細な印象を受けた。それは指揮をする姿からも感じられた。オーケストラの演奏会って何が起こるかワカラナイ。ラザレフさんの指揮でも眠いときはあるし、ワーグナーでも感動させられちゃうし、井上さんもマフィアではなかった。頭と耳を柔らかくして偏見を捨ててこれからも楽しみたいものだ。

最後にティンパニさん。なんと今回はNHK交響楽団の首席奏者、久保さんだった。あぁびっくり。N響の定期演奏会に通っていたころは何気なく聴いていたけど、改めて久保さんのティンパニのすごさにびっくりした。ひとつの曲の中でも強弱だけでなく元気な音、優しい音、尖った音、など音が多彩だ。たまにはオーケストラ間同士でお助けマン出し合うのもいいのではないか。聴いている方も演奏する方も新しい発見があるのでは。N響はホルンの福川さんを連れて行っちゃったんだし少し協力してくれても。carouselpony

|

井上道義さんのストラヴィンスキー (日フィル 6月東京定期)

6/26(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第621回東京定期演奏会

伊福部昭  マリンバと管弦楽のためのラウダ・コンチェルティータ
ストラヴィンスキー ハ調の交響曲
ストラヴィンスキー バレエ組曲《火の鳥》
(ストラビンスキー)

指揮  : 井上道義
マリンバ: 安倍圭子

 今回の演奏会も良いにしろ悪いにしろ、いろいろと考えさせられました。

 自分にとってストラビンスキーとは「春の祭典」95%+「火の鳥」5%だったのが、最近「シャネルとストラビンスキー」の映画を観たりバレエ・リュスのペトリューシュカの映像をNHK BSで観たり(妻に引きずりまわされているだけですが)してなんだか少し広がりが見えてきそうな気配です。「ハ調の交響曲」も、ん~なんだかなぁ、って思いながら通勤中に少しずつ聴いていましたが、ようやく演奏会の1週間近くになってから、もしかしたら面白いかも、って思い始めました。脈絡のない音楽の部品が寄せ集まっているような、青空をコップや猫や扉や自転車がぷかぷか浮いて流れていくような、そんなイメージが湧き始めたら楽しくなってきました。生の演奏ではどんな風に聞えるのだろう、と楽しみに会場に向かいました。

 会場について思い出しました。1曲目はマリンバの曲だった。CDが手に入らず忘れていました。この曲は予習なし。マリンバの安倍さんも細くて小さな体だったので大丈夫かなぁ、ってちょっと心配になりましたが、とんでもない。とても面白い曲で素晴らしい演奏でした。マリンバとオーケストラの組み合わせはたぶん始めて聴いたけど、とても相性がよいように思いました。弾いたり叩いたりする楽器は音量がパルス状に立ち上がってだんだん減衰するので弦楽器や管楽器に埋もれないで目立つのがよいのかもしれません。安倍さんは小さな体の全身を使って最後のクライマックスは腕がつらないかな、って心配になるくらいの情熱的な演奏でした。鳥肌が立ちました。相対的にもう少しマリンバの音量がほしかったかな、欲を言えば。アンコール2曲目の自作の曲もよかったです。マレットの反対側まで使って多彩な音を出していました。ただ木片を叩いているだけのはずなのになんとまあ表現豊かなことか。

 「火の鳥」は学生の頃からCDで聴いていたけど生で聴くのは初めてかな?2回目かな?「ハ調の交響曲」よりちょっと甘めの弦の響き、静けさと激しさのコントラスト、オーケストラのチームワークのよさを感じました。しかししかし、毎回感じるけどホルンがうまいなぁ。指揮者の井上さんも最後に2回立たせました。やっぱりなぁ。席が近いせいか、生演奏ならではの迫力も感じることができ、幸せになりました。ところがこの曲の感想は妻と意見が割れました。妻は(バレエ・リュスの影響で?)もっときらきら輝くような演奏を期待していたらしいのですが「思ったより地味」だったそうで。「日フィルの限界かぁ」と残念そうでした。

 一番楽しみにしていた「ハ調の交響曲」は残念、あれ?という感じでした。なぜ「あれ?」か。不思議なことに「あれ?」な理由が良くわからないのです。演奏は悪くなかったと思うんですが、自分が期待していたように響いてこない。聴こえてこない。なんでなんで?演奏会の後、妻に「どうだった?」って聞いたら「う~んいまいち」とのこと。この曲は意見が合いました。でも妻も理由が良くわからない。「木管かなぁ?」

 同じ屋根の下で暮らしていて同じCDで「予習」して演奏会を聴きにいっても「火の鳥」のように妻と私で感じ方が違うのも面白いし、「ハ調の交響曲」のように「理由はわからないけどいまいち」というところまで同じように感じるのも面白い。音楽って不思議です。

 前日の金曜日は懐かしい仲間と久しぶりの飲み会。少し飲みすぎたけど楽しい時間を過ごしリフレッシュ。演奏会当日は少し寝坊して睡眠十分、気分爽快。焼肉屋だったからちょっとニンニクくさいけど。演奏会中もかなり集中できたし感覚が鋭かったと思う。本当は毎回こうありたいですが現実は厳しく、ストレス溜めて睡眠不足のまま足を運ぶことが多くて残念です。一庶民のささやかな贅沢としてこれからも寝不足の目をこすりながら通うことになりそうです。また、元気をもらいに行きます。

|