小澤征爾音楽塾 「カルメン」




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小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅢ
2015/3/15(日) 15:00~ よこすか芸術劇場
ベートーベン 交響曲第2番 ニ長調 作品36
ラヴェル 歌劇「子供と魔法」
指揮 : ナタリー・シュトゥッツマン(ベートーベン)
小澤 征爾(ラヴェル)
管弦楽 :小澤征爾音楽塾オーケストラ
期待通り、ゾクゾク・ワクワク・ホンワリの演奏会だった。横須賀の海と夜景を見ながらのディナーも感動を熟成させてくれた。
ベートーベンの2番は期待以上。荒削りな音は決して上品とは言えないけど、小さなフレーズにもこだわって攻めている若いエネルギーが伝わってきてゾクゾクした。指揮者のナタリーさんが高いものを求め、若い演奏者がそれに答えようと全力で演奏する、そんな迫力に感動。子供に語りかけるお母さんみたい、というのはナタリーさんを見ての妻の感想。
1、3、4楽章はテンポ早めで若さ爆発!ゾクゾク(少しハラハラ)しっぱなしだったが、2楽章はしっとり美しく、他の楽章と別世界だった。猛進の1楽章の後のせいもあり、最初の弦の美しさに胸がキュンとなった。
演奏会には感動したくて出かけていくけど、技術力だけでは感動できないし、熱い思いだけでもダメ。寝不足でもダメだし、イライラしててもダメ。一期一会だとつくづく思う。
視覚と聴覚では、7対3くらいで視覚の方が強く脳にインプットされるように感じる。その点今回の演奏会は前半はオーケストラに集中し、後半はオペラを楽しむことができ、ありがたい。オペラを観るといつも耳がおろそかになって悔しい思いをするので、今回は対策を打った。「字幕をできるだけ見ない」、「ステージと指揮者を半分ずつ見る」。案外いい作戦だと思う。特に今回のストーリーは簡単なので字幕なしでもOK、舞台と音楽をバランスよく楽しめたと思う。
前回のフィガロの結婚と比べて歌手の迫力が全体的に足りなかったように感じたけど、このオペラの持つ優しさに演奏全体の雰囲気が合っていたように思う。どの歌手も声が優しく暖かかった。合唱もよかった。特に感動したのは、ちょっと変かな、森のシーンの最初の場面。舞台の外(左右)で夜の森を表現する虫の鳴き声だろうか、神秘的だった。
オーケストラも前半のベートーベンの荒削りな感じはどこへやら、ラヴェルの音楽になった。去年のフィガロの結婚では歌手とオーケストラが合ってないな、と感じる箇所があったけど今回は全く気にならなかった。私は後半の森のシーンがとても好きだ。神秘的な夜の森を、紺と緑と月明かりの黄色で色づけしたようなラヴェルの音楽が見事だった。
少年が傷の手当をした後の森の生き物たちの暖かい空気が席まで届き、ホンワリと癒された。いいオペラだなぁ。
少し欲を言えば、オーケストラの音がちょっと真面目すぎたかな、音が硬いかな、と感じたところもあった。ふんわり気だるい感じがもう少し伝わってくると自分のイメージしている曲により近づくように思った。
座席の話。今回は2階席の右側(2R)。周りには小中学生と思われる多くの子供たちがいたが、とてもお行儀がよく好感を持った。オーケストラピットは、ベートーベンのときはステージと同じ高さで(後ろの舞台は幕がおりたまま)、ラヴェルのときは1階客席の高さに下げて演奏された。どちらもステージ右端が少し隠れるものの十分な視野が確保できてほとんどストレスがなかった。前回座った3階席とステージへの角度はほとんど変わらないのに、断然見やすい。さすがA席、高いだけある。
来年のこのプロジェクトではよこすか芸術劇場の公演がないとのこと。何とも残念だ。都心で聴く演奏会とは違い、ゆったりした気持ちで楽しむことができる点がとても気に入ってるのに。
◇スタッフ
音楽監督・指揮:小澤征爾
指揮 :ナタリー・シュトゥッツマン
演出 :デイヴィッド・ニース
装置・衣裳:サラ・G・コンリー
衣裳 :ジェームス・アチェソン
照明 :高沢 立生
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
合唱 :小澤征爾音楽塾合唱団
◇出演
子ども:エミリー・フォンズ
肘掛椅子/木:エヴァン・ボイヤー
母親/中国茶碗/とんぼ:大賀 真理子
火/お姫様/うぐいす:キーラ・ダフィー
雌猫/りす:清水 多恵子
大時計/雄猫:町 英和
小さな老人/雨蛙/ティーポット:ジャン=ポール・フーシェクール
安楽椅子/こうもり:栗林 瑛利子
羊飼いの娘/ふくろう:盛田 麻央
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2014/5/27(火) 19:00~ ミューザ川崎シンフォニーホール
水戸室内管弦楽団 川崎公演
メンデルスゾーン 弦楽のための交響曲 第2番 ニ長調
モーツァルト オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
ベートーベン 交響曲第7番 イ長調 作品92
指揮 : 小澤 征爾
オーボエ : フィリップ・トーンドゥル
ステージ上手側横の席を奇跡的にとることができ、素晴らしい演奏を楽しませていただいた。
しかしなんと、一番感動したのは指揮者なしのモーツァルト。各楽章出だしの緊張感はただものではなかった。ステージに吸い込まれるかと思った。オーボエのなんと甘く切ない音。出だしから鳥肌が立つ。指揮者がいないことで逆にオーケストラとソロ演奏者の一体感が強くなる感じ。さらに小さいオーケストラだからか、ソロとオーケストラのかけあいがまるでお話しているよう。オーボエもオーケストラも音がとても美しく軽やかで、あぁ、もしかしたらモーツァルトの真髄を掴んだか!?な?と一瞬うぬぼれた。いやしかし、こんなにモーツァルトに吸い込まれたのは初めてだ。そして演奏の完成度はただものではない。超越的プロフェッショナル集団?
小澤さんのベートーベンは驚きと発見が多かった。ダントツは3楽章。こんなに面白い曲だったのか、と初めて知った。聴き慣れている録音とは別の曲のようだ。何が違うのか説明できないのが歯がゆくくやしいが、いつも退屈な3楽章なのに。それから2楽章。あぁ、小澤さんと同じ日本人でよかったな、と思った。あの切ないフレーズにさらに緻密で高度な表現が加えられている。大きな板に掘られた大胆な彫刻に感動してさらに良く観たら、見えないくらいの細かい手の込んだ細工が施されていたことに気がついた。そんな印象。
もっとさっぱりした演奏が好きな人もいるかもしれない。もしかしたらこんなベートーベンはイヤ、っていう人もいるかもしれない。でも、じゃあお前演ってみろよ、と言われて同じようにできる人はいないのだろう。 小澤さんの演奏の素晴らしさってここにあるのかもしれない、小澤さんの真髄を掴んだか!?な?と一瞬うぬぼれた。もしかして勝手な想像だけど、カラヤンも同じような細かい手の込んだ彫刻を彫る人だったのではないか。
それにしても3楽章から休まず続けた超特急の4楽章、カッコよかった。またそれをさらっと弾くオーケストラのメンバーはなんとまあすごいこと。きっと予定では前の楽章同様、小澤さんの体調を考慮し、しばし休みを入れる予定だったのだろう、それを続けて演奏し客を喜ばせようとする小澤さんのサービス精神なんだろうな。
楽章間で椅子に座った小澤さんは糸を外したマリオネットのようで少し切なくなった。素晴らしい演奏をありがとうございました。
メンデルスゾーンはいまいちピンとこなかった。初めてのミューザ川崎で音の反射の大きさが気になってしまった。反響の強さはサントリーホールと同じくらいではないか、と思うけど同じ厚化粧でもちょっとそそられない印象を受けた。そっちの方が気になって音楽に集中できなかったこともあるがやはり演奏としての魅力はモーツァルトとベートーベンに比べて少なかったように思う。
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それでは会場の話。場所はよこすか芸術劇場。初めての体験だった。
<オペラ・ドラマティコ形式>って何だかわからず、演奏会形式に衣装を着けたくらいかな、と思っていたが全然違った。大道具が若干簡略化されていることとオーケストラピットが凹んでいないこと、またそれに合わせて舞台も高くなっていること、おかげで安い私の席からもなんとか舞台の半分くらいがみえたこと。ストーリーはわかりやすいしオーケストラは見やすいし、私にとってはみんなプラスの想定外だった。
指揮の振り分けも、もっとこまめに交代するのかと思ったら各幕で1~2回くらいではなかったか。2幕ではほとんど小澤さん、3幕ではほとんどテイラーさん、とばらつきはあったが。この部分は小澤さんで聴いてみたかった!などと思ったところもあったけど、贅沢は言うまい。最後まで小澤さんが指揮をしてくれたことだけで感動のあまり胸がいっぱいになったのだから。
休憩は1幕の後に20分、2幕の後に20分、の2回。長さも回数も丁度良い感じだ。一般的な「フィガロ」も同じなのだろうか。
音響について。
意外に響いた劇場だった気がする。昔の記憶でどこまで正しいか自信がないが、ウィーン国立歌劇場ではもっと反射音が少なかったように思う。そのため声がとてもよく聴こえ、反対にオーケストラは華やかさがないものだった。よこすか芸術劇場は同じ馬蹄形だけどそこまで極端ではなく多目的を前提とした設計なのだろうか。
座席は3階左側(3LA列)だった。ちゃんと座ると前の壁と手すりで舞台が斜めにカットされ、オーケストラも半分しか見えない。オーケストラより舞台を楽しみたいのであれば正面に座らなくてはならないだろう。舞台に遠い方の隣人を気遣えば前に乗り出せずストレスは感じる。ある程度ストーリーを覚え頭の中で舞台を再構成しながら観れればよい席だと思う。
そういえば小さな出会いがあった。
妻は舞台寄りに座ったが、その隣に座ったご年配の婦人がかなり身を乗り出して観ておられた。1幕が終わった直後に少し体を下げていただくようお願いしたところ、逆に恐縮されてしまい申し訳ないことをした。しかしとても素敵な方で逆に世間話などしてくれ気持ちよく2幕以降を楽しむことができた。お互い不愉快な気持ちになる可能性もあったのにご婦人の大人な対応に感謝です。
あっという間の3時間が過ぎ、劇場を後にしたのは19時近かったか。今回ばかりは余韻を楽しみたくて食事をしてから家路についた。食事の際にも素晴らしい出会いがあり今日一日に花を添えてくれたが、そのことは私たち夫婦の大切な思い出として語り継がれることになる。
リアルなものから得られる感動の大きさに改めて感動し、クラシック音楽の奥深さに改めて畏敬の念を感じつつ、そしてますますクラシック音楽の深みにはまっていく自分を感じるのでした。おしまい。
■スタッフ
音楽監督/指揮 :小澤征爾
指揮/チェンバロ :テッド・テイラー
演出 :デイヴィッド・ニース
装置 :森安淳/尼川ゆら
衣裳 :ジェームス・アチェソン
照明 :高沢立生
管弦楽 :小澤征爾音楽塾オーケストラ
合唱 :小澤征爾音楽塾合唱団
■キャスト
アルマヴィーヴァ伯爵:クレッグ・ヴァーム
伯爵夫人 :シャーン・デイヴィース
スザンナ :デヴン・ガスリー
フィガロ :ウェイン・ティグス
ケルビーノ :リディア・トイシャー
マルチェリーナ :牧野 真由美
バルトロ :デニス・ビシュニャ
バジーリオ :高柳 圭
アントニオ :町 英和
ドン・クルツィオ :升島 唯博
バルバリーナ :三宅 理恵
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2014/3/16(日) 15:00~ よこすか芸術劇場
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXII
モーツァルト 歌劇《フィガロの結婚》<オペラ・ドラマティコ形式>
アルマヴィーヴァ伯爵:クレッグ・ヴァーム
伯爵夫人 :シャーン・デイヴィース
スザンナ :デヴン・ガスリー
フィガロ :ウェイン・ティグス
ケルビーノ :リディア・トイシャー
指揮 : 小澤征爾、テッド・テイラー
チェンバロ : テッド・テイラー
小澤征爾音楽塾オーケストラ&合唱団
今の世の中、リアルなものとバーチャルなものがあって、どちらを欠いても生きていけない。ケータイは距離と時間を縮めるタイムマシンだけど、気心知れた知人とはたまには会って酒でも飲まないと満足できない。そういうことだ。
そんなリアルとバーチャルのご機嫌を取りながら日々の生活に追われているが、今日はリアルなものに夢のような一日をプレゼントしてもらった気分だ。
初めて生で観た小澤さんの指揮は魔法使いのようだった。昔テレビで観た髪を振り乱しての大きなジェスチャーはないのだけれど指先からビームが出ているかのようにはっきりくっきりしていた。そのせいか、特に1幕では小澤さんの指揮とテイラーさんの音の違いを感じられたように思う。小澤さんの音はパンチがあって抑揚が大きく小さなフレーズにも色をつけてどちらかというとモダンな感じ。テイラーさんは穏やかで歌手を邪魔しない、でもしっかりした古典的な音のように感じた。とはいえ第2幕以降で確かめようと舞台そっちのけでずいぶん真剣に聴いたがだんだん違いが判らなくなり自信がなくなった。さて実際はどうだったのか。
でも間違いないのはオーケストラのメンバーが指揮者の指示を的確に表現する技術をもっていたこと。細かいことを言い出せば気になるところはいくつかあったけど、舞台を観ていてもググッとオーケストラの音に神経が集中し目がおろそかになるシーンがいくつもあった。若い寄せ集めのメンバーといえばそれまでだけど経験値と伝統が足りないだけで、まただからこそ面白いのではないか、と思った。
相変わらず目と耳が両立しないのが悔しいが、貯金箱壊してようやく手に入れた座席だから損してなるものか、という卑しい根性がいけない。オペラを楽しむには、また来ればいいや、と腹をくくる男気が必要かもね。
歌手のみなさんにも泣かされた。特にフィガロ役のティグスさんには感動。声量が大きく迫力があった。全体的に男性歌手の方が存在感があったように思う。女性歌手では伯爵夫人役のデイヴィースさんが好きだ。2幕、3幕でのアリアは素晴らしかった。でも何故か、一番うるっときたのは、手紙の二重唱(そよ風に寄せて)だったのはなんでだろう。その後拍手したかったのにできなかった。アリアの時以外はしないものなのだろうか。周りの拍手に合わせることしかできない私。
話はそれるけど先日学生時代からお付き合いいただいている、趣味でクラシックギターを弾いているNさんと久しぶりに音楽の話で盛り上がった時に、こんな話をしてくださった。『何かを表現しようとすると間違うリスクが高くなる。かといって間違わないように、とばかり考えると何も表現できなくなる。もちろん間違わないのは一番いいけどそのために何も表現できなければ(アマチュアとして)演奏する意味がない』という趣旨の話を聞き深く納得した。今日演奏していた方々はプロの方々なのでもっと高いレベルのことを考えているのだろうけど、我々聴く側の人間も、ただ間違ったから下手、といった単純な判断ではなく、自分の心をどれだけ揺さぶってくれたか、ということに神経を集中したいものだ。
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小澤征爾さんのご健康回復を心より祈念いたします。
音楽の素晴らしさ以前に、音楽に対する真剣さと後進の育成にかける情熱をあのお歳で失っていない強さに偉大さを感じます。
一度でもいいから小澤さんの発する情熱を同じ場所で感じてみたいと思い、今日(3/17)の神奈川県民ホールのチケットをようやく確保し楽しみにしていました。機会が失われたことはとても残念ではありますが、また元気に指揮をされる姿を見せていただけることを楽しみにしています。
ラザレフさんのラフマニノフも楽しみにしていたのに、そんなわけで結局どちらも行けなくなってしまった。ショックのあまり?風邪でダウンしてしまったので。
来週の横浜でのラザレフさんのブラームス、楽しみにしています。
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