小林研一郎

こばけんさんのチャイコフスキー

2017/3/4(土) 14:00 東京芸術劇場
日フィル 第688回 東京定期演奏会

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23
チャイコフスキー 交響曲《マンフレッド》op.58

指揮       : 小林 研一郎
ピアノ                    : 金子 三勇士


パリ管弦楽団に続いて2回目の芸術劇場。
比較的正面に近い3階席だったが、
ステージが遠いなあ、という印象。

前半のピアノ協奏曲は物理的な距離だけでなく、
例えるなら、
部屋の中から庭に置いてるテレビを観ているような、
気持ち的にもそんな距離感があって、
しらけた気持ちになった。

私の心に共振する何かがなかったのだろう。

後半のマンフレッドは、
うねるようなこぶしのきいた弦、揺れ動くテンポに、
日フィルの音を思い出させてくれたし、
こばけん節も感じられ、
そうそう、日フィルってこんなだったって、
思い出させてくれた。

モダンなデザインのパイプオルガンも
上品ないい音を出していたように思う。
ホルン、フルート、頑張ってたなぁ。
いい音だった。弦はもう少しがんばれるのでは?

それにしても、

こばけんさんがつくる音はどうも上品さと美しさが
足りないように思うのは私の気のせいだろうか。
強奏したときの音が美しくないと感じるのはいつもと同じ。

そうは言っても演奏会の最後に、
やんややんや次も頼むよよかったよ、
みたいな雰囲気になるのも、
こばけんさんの力なんだろうな。

サントリーホールは、
野生のライオンをてなづけるようなもの。
上手くいけば大喝采、下手したら首掻き切られる。
そんな印象。

芸術劇場はどうだろう。
どちらかというと地味な音?
またの機会を楽しみに。



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こばけんさんのシェエラザードと春の祭典

2016/1/23(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第677回東京定期演奏会

リムスキー=コルサコフ 交響組曲《シェエラザード》
ストラヴィンスキー   バレエ音楽《春の祭典》

指揮 : 小林 研一郎

春の祭典、久しぶりに生で聴けてうれしかった。

聴き慣れた演奏より少しゆったりしたテンポで悪くなかった。出だしの緊張感もなかなか。第2部の前半、静かなところは堕落的にも響き、妖気のある美しさを感じた。新しい発見だった。そういえばホルン9本のベルアップ、見てて圧巻だった。楽譜に指示はあるのかな?春の祭典では初めて見た気がする。

本当に難曲なんだろうな、と思うけど、全体的にはこばけんさんの下、よく統率がとれているなぁ、と感じた。でもいくつかしっくりこなくて、なんだか、モヤモヤ感が残った。

ひとつは、弦がきれい過ぎて凄みがなかったように思った。あれだけ管楽器の音が強いと対抗するのが大変だろう。それからティンパニの音がちょっと馴染まなかった。強く叩けばいいというものでもないだろうに、と感じた。

シェエラザード。標題音楽って、どうも苦手意識がある。「こういう情景だから、こう感じなさい」と言われているようで。楽しめる低ラインは確保できるけど自由に感じることを制限されているようで。

とは言うものの、今日のシェエラザードはよかったように思う。拍手も春の祭典より大きかったのではないか。特に第3、第4楽章がよかった。第3楽章は春の祭典と裏腹で、弦楽器のきれいさが際立ったように思った。第4楽章は前半と比べても音がクリアでノリノリの印象を受けた。思い入れの少ない曲だったけど、それなりに楽しめたかな。

妻はというと、期待していた春の祭典よりシェエラザードの方がよかったらしい。思い入れの強い曲ほど理想の演奏がはっきりしてるので、感動するのが難しいのかも。wine

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コバケンさんのモーツァルト、シベ2

2015/1/31(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第667回東京定期演奏会

グリーグ   ホルベルク組曲 作品40
モーツァルト オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
シベリウス  交響曲第2番 ニ長調 作品43

指揮  : 小林 研一郎
オーボエ: 杉原 由希子

感動もしたけどがっかりもした、いろいろ感じた演奏会だった。

まずは、杉原さんのオーボエ。楽器の中でも大好きなオーボエの音色を堪能できた。昨年5月に聴いたフィリップ・トーンドゥルさんと水戸室内の演奏を聴いてすっかりとりこになっている曲だ。楽しみにしつつも、がっかりさせられないかな、と不安もあったのは事実。でも日本人女性らしい繊細で美しく、歌っているような素晴らしい演奏に満足でき、ますますこの曲が好きになった。

ただ残念だったのは、オーケストラがちょっとうるさすぎたか。モーツァルトだけでなく演奏会全体を通して音が重々しく、グリーグもシベリウスもみんな、ベートーベンみたいに感じた。特にモーツァルトは、目の中に星がある女の子(杉原さん)がカッコイイ男の子と手をつないで走ってくる少女マンガのひとコマのような、そんな明るさや初々しさを期待していたのに、今日の演奏で少女マンガの女の子に引っ張られてくるのはコバケンさんでがっかり、そんな印象(変なたとえでさらにがっかりだ)。

この重々しいモーツァルトも交響曲だったら「へぇ、こんなのもありか」と、それなりに楽しめたかもしれない。緊張感があって実直で重厚で素敵な音だったと思う。でも残念ながら今日はオーボエのキラキラ感を引き立てていなかったように思う。

グリーグは予習を手抜きして本番で初めて聴いたけど、あぁ真面目に予習しておくんだった、と後悔するほどいい曲だった。チャイコフスキーの弦楽セレナーデも同じように感じるけど、弦楽合奏って自分の感情を直接揺さぶるような、または新興宗教のような、恐ろしいパワーを感じる。今回は重厚さに加えて、感情を抑えることでより強い感情を表現し、バッハのお面をかぶったグリーグという音楽の二面性も感じることができた。

シベ2もやっぱり重かったかな。シベリウスだって天国から「北欧はそんなに陰気臭くないわい」とぼやいているのではないだろうか。さらに「はいここで感動してください」という感じの押しつけがましい盛り上げにちょっと引いてしまう。もうひとつ付け加えれば強奏のときに音が汚い。これはコバケンさんのときはよく感じるけど。コバケンさんも外山さん同様、時代に取り残されているのではないか、とふと不安になった。

文句は言いつつもシベ2は好きな曲なので最後はそれなりに感動できたのだけれど、拍手と「ブラボー」があまりに早くて一気に覚めてしまった。ホールに響く最後の余韻を楽しめないではないか。あれだけ事前に放送で注意されてもまだやるか。無神経な自己顕示欲の塊か、日本語が通じないのか、余程知能が足りないのか。コバケンさんのファンにこういう人が多いのだろうか。かなりがっかりした。聴衆の品位は演奏会のチケットの値段の高さに比例しているようにも思われ、そういうことを考える自分も何だか嫌になる。

なんだか今日はぼやきが多く、下手なたとえもあってさえない感想になった。

wine

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コバケンさんのブラームス 3番・1番

2013/11/2(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第655回東京定期演奏会

ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
ブラームス 交響曲第1番 ハ短調 作品68

指揮  : 小林 研一郎

素晴らしく音のきれいな日フィルらしい演奏を聴かせていただいた。
秋はブラームスが似合うなぁ。

特に前半の3番は感動した。昨年9月定期演奏会での荒々しいブラームスとは全く別の演奏のようだ。テンポは私が聴き慣れた録音より少し遅めだったが、ゴツゴツせず穏やかかつ繊細で弦も管も優しい音に感じた。全体の音量のバランスも心地よかった。特徴的だったのは弦の低音の力強さと安定感。ところどころでしっかり響いてバイオリンのヒステリックな高音と好対照で効果的だった。また第2楽章ではオーボエとクラリネットの穏やかな音が印象的だった。全体的にもコバケンさんの情熱というよりは日フィルの音のきれいさが印象に残ったが、第3楽章あたりでコバケンさんのこぶしの効かせたメロディーが聴けたらもっと面白かったかもしれない。

後半の1番もいい演奏だったと思うが全体の緊張感は第3番にかなわなかった。また第1楽章の金管は音量が大きすぎた印象だった。最後の第4楽章は爆走するでもなく音が大きすぎるでもなく、どちらかというと穏健なブラームスだった。私にとってはなかなか満足できる演奏だったが、コバケンさんのファンにはもの足りないのではないか。

長年にわたるクララへの愛情、第3番作曲時に親しくしていたヘルミーネ・シュピースという女性、それにもかかわらず生涯独身を通したこと、そして数々のなんとも切ない旋律のことなどを考えると、19世紀に遡りブラームスに会いに行きたくなる。特に若い頃のブラームスに会ってみたい。今日はそんなことを感じさせる演奏会だった。

ところで今月来月と、ロマン派と古典派が続くため妻がむずがっている。来月の小倉さんの交響曲ってどんな曲だろう。2月のショスタコヴィッチまで待てるかな。日フィルさん、もう少し近現代の曲を多めにお願いします。妻が暴れだしそうです。maple

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コバケンさんのブラームス

9/29(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第643回東京定期演奏会

ブラームス  交響曲第2番
ブラームス  交響曲第4番

指揮  : 小林 研一郎

過去、2004年にN響で今回と同じ演目で聴いている。また2010年1月に飯守さん指揮で第4番2012年1月にラン・シュイさん指揮で第1番同3月にラザレフさん指揮で第3番を聴いている。ブラームスの交響曲は昔からCDでよく聴いていて、いつか生で聴きたいと思っていた曲ばかりなのに、心を動かされたのはラザレフさんの第3番だけだった。残念ながら今回もあまりいい印象は持てなかった。

まずはプログラムがよくないのではないか。2番は長いので前半で疲れてしまった。まとめて聴きたいチクルス好きの人はいいかもしれないが、私は苦手なようだ。

2番については演奏もあまりいいところが感じられなかった。1楽章、2楽章はリズムをしっかり刻んでドイツっぽい重厚感を醸し出していたと思うが、もう少し明るめのほうが好み。せっかくの2番なのに、重すぎて2楽章が終わったところで疲れてしまった。最終楽章もいまひとつオーケストラの息が合っているように思えず、ただ爆走、という印象だった。

大活躍のはずのホルンさんも音が固くて、変な音が出ないかとドキドキした。テンポが遅めだったからだろうか。

後半の4番はずいぶんよかったと思う。特に2楽章は緊張感がありとても美しくロマンティックだつた。が、残念ながら前半の疲れを引きずって気持ちが後ろ向きになってしまったこともあり、他の楽章では感動を得られなかった。

2曲通して感じたのは音がうるさい、何となくまとまっていない、そんな印象。

まぁ、こんなこともあるのかな、と、次回のラザレフさんに期待しています。

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コバケンさんのブルックナー9番

6/16(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第641回東京定期演奏会

シューベルト   交響曲 第7番 ロ短調《未完成》
ブルックナー   交響曲 第9番

指揮  : 小林 研一郎

コバケンさんの指揮者デビュー40周年ということもあり、録音機器も入っていることもあり、気合十分の演奏だったと思う。

日フィルの美しい弦がロマンティックに旋律をうたっていて、うっとりするような箇所がいくつもあった。また強奏の後の曲中の休止(全部の楽器がお休みするところ)では残響が消えるまで十分時間をとりサントリーホールの残響の美しさも感じることができた。これがコバケンさんのブルックナーか。コバケンさんだけでなく木管も金管もとてもきれいで日フィルらしい素敵な演奏だった。特に第2楽章は戦闘的な旋律と穏やかな旋律の対比が面白かったし、第3楽章も美しかった。

ただ全体的に、特に第1楽章で気になったのは強奏のときに音がうるさく感じたこと。うーん、もっときれいな響きになるような気がするなぁ、と何度か感じたところがあった。ラザレフさんやインキネンさんの演奏ではほとんどない感覚。机の上に本とかノートとか筆記用具とかいろんなものが山積みになっている(音が厚い)のは一緒なんだけど、きちんと整理されていなくてどこに何があるのかわからなくなっている感じ。ラザレフさんやインキネンさんの演奏は本は本、ノートはノートで整理されて山積みになっている感じ。

上記のように私にとって残念に感じたところもあったけど、ブルックナーの最後は指揮棒が降りるまでみんなの拍手も我慢できて感動的だった。

ブルックナーの9番はコバケンさんにとって今回始めての指揮と聞いた。何よりも70歳を過ぎて新しい曲に挑戦する姿勢は尊敬してしまう。自分もその歳になって新しいことに挑戦する気概と失敗を恐れない勇気を持ち合わせていられるだろうか、と考えると、とてもとても自信がない。少しでも近づきたいものだ。これからもまだまだアグレッシブなコバケンさんの演奏を期待したい。自分も負けないように日々がんばって生きていきたい。

しかし、問題はシューベルトの《未完成》だ。今回は予習もしたし楽しめると思ったのに、また、寝てしまった。今のところ《未完成》には取り付く島がない。曲に魅力を感じることができない。まぁ、時が解決するかもしれないし。待ちますか。

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コバケンさんのハンガリー魂

5/20(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第630回東京定期演奏会

バルトーク  管弦楽のための協奏曲
リスト     ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
コダーイ   ガランタ舞曲
リスト     交響詩《レ・プレリュード》

指揮  : 小林研一郎
ピアノ : 小山実稚恵

 またコバケンさんにやられた。
 華やかなバルトーク、勢いのあるピアノ協奏曲、情熱的なガランタ舞曲、迫力のレ・プレリュード。最後のレ・プレリュードでは思わず目頭を熱くすることになった。

 演奏会1曲目の冒頭にいつも、ありゃ?って思うんだけど、今日はバルトークの1楽章から緊張感ある素敵な演奏だった。2楽章ではCD聴いててもわからない管楽器のバトンタッチが視覚的にもよくわかり、まさに立体的な曲であり演奏だったと思う。ホールの残響を考慮してだと思うけど長めの休符も心地よく、フィナーレは音も濁らずとても華やかでホールの空気に色がついたかのような印象だった。
 バルトークがアメリカに渡った後の不遇の晩年の作品であることなど曲の背景を知ると、4楽章の美しい旋律がとても切なく聴こえた。また5楽章ではそんな中で自らの人生の戦いに挑んでいく強さを感じた。もしかしたら自分へのエールではないかと気がつくと、急に曲への親近感が湧き感動もまた大きかった。

 ピアノ協奏曲はさぞかし小山さんも演りにくいだろうなぁ、あんなにいい演奏の後じゃ、って思ってたけど、さすが小山さん。テレビで観るおっとりしたキャラからは想像できない情熱的な音にびっくり。甘く切なく繊細な旋律の部分と情熱的な部分のコントラストが強く印象に残った。いままでピアノ協奏曲ではピアノがオーケストラに埋もれているような印象を受け、それは席のせいだと思っていたが間違っていたかもしれない。今日のピアノは迫力があった。
 妻は演奏会前に「この曲はオーケストラの出たしからピアノがバ~ンって入るところが勝負だね」なんて断定的に言っていたが、今日の演奏を聴いてまんざらウソでもないか、と思った。

 ガランタ舞曲では東欧の民族音楽を強く感じることができた。妻曰く1楽章のバイオリンの奏でる旋律が切なく心に響いたとのこと。もしかしたら震災地での演奏がオーケストラのみなさまに何かいい影響をもたらしたのでは、とも。確かにそうかもしれない。

 「前奏曲」が最後の曲かぁ、とどうも納得がいかなかったけど、聴き終わって納得。今日の演奏は最初から最後まで心に響く演奏だった。プログラムにあった「われわれの人生は、死によって奏でられる未知の歌への一連の前奏曲なのではあるまいか?」というラマルティーヌの詩の一節が演奏中に頭をよぎると、あぁ、そうかもしれないな、などと妙に納得してしまい、豪快なフィナーレではついうるうるしてしまった。なんだか、元気出してがんばらなきゃ、って少し思ったりして。力をもらえたような気がした。

 今日は全体通して心に響く演奏だった。
特にクラリネットさんが大活躍。優しく暖かい音色に終始魅せらた。
フルートさんもオーボエさんもとても素敵だった。

 いい一日だった。note

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コバケンさんのサン=サーンス

5/7(土) 14:30~ サントリーホール
日フィル コバケン・ガラ

サン=サーンス   序奏とロンド・カプリツィオーソ
サン=サーンス   チェロ協奏曲第1番 イ短調
サン=サーンス   交響曲第3番 ハ短調《オルガン付き》

指揮    : 小林研一郎
バイオリン : 木野雅之
チェロ   : 菊地知也

 3月12日の定期の振り替えで今回のコンサートに来ることができた。交響曲は2回目かな、あの迫力をコバケンさんの指揮で、しかもサントリーホールで聴けるとあって楽しみにしていた。

 チェロ協奏曲は今まで聴いたことがなく、少し予習してみたがいまいちピンとこない。全体的にマイルド過ぎて退屈な感じ。生の演奏でどう感じるか楽しみだ。

 さて本番、まず気がついたことがあった。サンサーンスの曲の特徴だろうか、協奏曲にしても交響曲にしても弦楽器が目立つ部分と管楽器が目立つ部分のランスいい。特に前半の2曲ではソロとオーケストラが主張しすぎることなく曲を作り上げているなあ、と感じた。これはCDを聴いていたときは気付かなかった。加えてバイオリンもチェロもとてもきれいなソロだったと思う。
 とはいえ、やはり協奏曲は曲自体の退屈感は否めず好きにはなれなかった。前回の演奏会でモーツァルトのクラリネット協奏曲のソロを日フィルの方が演奏した時とても息が合ってよい演奏だと思ったし今回も同じように感じたが、今回は主張の少ない無難な演奏であるようにも感じてしまった。
 もしかしたら選曲のせいなのかもしれないけど、客演のソリストは1回1回の演奏会が自分の評価に関わる命がけの演奏だから心に響く演奏になりやすいのだろうか、そういう意味で客演のソリストを連れてくるのは重要なのだろうか、とも思ったりした。

 交響曲は期待通り、大迫力で大満足だった。サントリーホールのパイプオルガンは何度か聴いたけどこの曲のように大活躍する曲は初めてだったので感動。
 CDではアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団(1961年)、チョン・ミュンフン指揮パリ・バスティーユ管弦楽団(1991年)を聴いていた。アンセルメさんの方はさっぱりした感じ、チョンさんの方は甘くロマンチックな感じ、今回のコバケンさんのはどちらでもなく、ガツンガツン行く感じ。オルガンもかなり主張があり、ティンパニも強く、弦の強奏部分もがんばっていて1楽章前半や2楽章後半はかなりリズム重視だと感じた。2楽章後半の盛り上がりはさすがコバケンさん。ちょっと乱れたかな~って思ったけど最後までぶっ飛ばしって感じ。整然としたつまらない演奏を聴くよりはいい。このライブ感がたまらない。
 私はさっぱり気がつかなかったが、交響曲ではずいぶんチェロががんばっていた、と妻は感じたようだ。

 同じように聴いているつもりでも違う感想を持つこともあって、音楽ってやっぱり奥が深いなぁ、と改めて感じる。

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コバケンさんのドボルザーク (日フィル 5月東京定期)

5/29(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第620回東京定期演奏会

ドボルザーク チェロ協奏曲 ロ短調
ドボルザーク 交響曲第8番 ト長調
(ドボルジャーク)

指揮 : 小林研一郎
チェロ: ジャン・ワン(王健)

 何年ぶりかにコンサートでうるうるしました。

 特に後半の交響曲第8番は、2009年10月から日フィルの東京定期を聴いていますが、自分の中では1番の演奏だったと思います。演奏の完成度の高さから、コバケンさんの練習の厳しさを想像しました。またオーケストラとしての一体感を感じましたし、曲が進む毎に引き込まれていきました。

 毎回すごいなぁと思いますがホルンやトランペットの甘い音色にはうっとりしてしまいます。今回はフルートも大活躍で、見事な演奏に息を呑みました。演奏前にチェロが8番の第4楽章を繰り返し練習していましたが、指揮者が演奏後にチェロパートを指定して立たせたのは初めて見ました。これも練習風景を想像させる出来事でした。

 まさかまさかのドボルザークでこれほど感動するとは自分でもびっくりです。CDを通勤時に繰り返し聴いていましたが旋律の明快さや田舎臭さが鼻につき、やっぱり好きになれない、と半ばあきらめかけておりました。しかし自分にとってコバケンさんの解釈はむしろ新鮮でした。2、3楽章のテンポが遅めだったり強拍のとり方にあれ?っと思ったりしたけど全体としてはバランスがよかったように思いました。

 甘いホルンのソロに出だしから引き込まれ、緊張感のあるまま第1楽章が終わって鳥肌を立てていると、第2楽章はいつもの日フィルとは思えない甘い弦の合奏で始まったため、ここで不覚にもうるうるして鼻水が止まらなくなりました。予定外だったのでポケットのハンカチを出せずに鼻水は垂れ流し状態で2楽章を聴くことになりました。

 第3楽章はゆったりとしたテンポに驚かされましたが自分にとっては心地よいものでした。それが終楽章の勢いを際立たせていて、終わってみたらメリハリのある演奏になっていたと感じました。

 感動するパラメータって何だろう、って最近よく考えます。今回思ったのは曲の完成度って重要だな、ということです。N響の演奏会でもがっかりして帰ることが度々あり、オーケストラの演奏ってとても大変なんだ、ということを生のコンサートに通うことで少しわかってきました。だからこそ完成度が高く一体感のある演奏を聴くと、演奏者の熱意や苦労や集中力が伝わって思わず感動してしまうのかもしれません。

 今回は8番に感動したので8番のことばかり書きましたが、チェロ協奏曲もなかなかでした。ジャン・ワンさんの演奏も荒々しさと繊細さが両立し魅力的でしたし、コバケンさんとの息も合っているように思えました。ただ私は協奏曲を聴くとどうしてもソロとオーケストラのバランスが気になってしまい集中できません。今回も例外ではありませんでした。席がステージ横でソロが指揮者の影に隠れたせいもあるのでしょうが、チェロの音がなんとなく曇ってしまいオーケストラに埋もれて聞こえました。それは席のせいなのか、演奏のバランスのせいなのか、はっきりわかりません。でも8番同様、完成度の高い、素晴らしい演奏だったと思います。

 一方妻はというと、「いままでの日フィルで1番」という点では一致したものの、どうやらチェロ協奏曲の方に感動したらしく、他のチェリストの同じ曲をきいてみたいと騒いでおりました。チェロの響きが東洋的だと感じたらしいです。2008年10月のN響定演で聴いたショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲第1番もお気に入りだったのですが、このときのチェリスト(エンリコ・ティンド氏)とは違う良さを感じたらしいです。「例えるならスペードとダイヤ」などとよくわからないことを言っていました。あるレベルの音楽になるとこの部分を間違えたとか音を外したとか、そんなことではなくて演奏者の持っている思いをどれだけお客さんに伝えられるかだ、と。そういう意味では日フィルはすごい、と。そんなことも熱く語っておりました。その点については私も同感です。

 フルートの演奏にも感動していたようです。今回特に8番では、この瞬間この女性のフルートに演奏はかかっているな、と思えるほど重要だったと思いますが、それをやりきる姿に勇気づけられると。

 演奏会って一期一会だな、と思います。次はどんな演奏を聴けるのか、楽しみです。

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日フィル 第九特別演奏会(2009/12/19)

12/19(土) 14:30~ サントリーホール
日フィル特別演奏会

J.S.バッハ トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
J.S.バッハ 主よ、人の望みの喜びよ
ベートーベン 交響曲第9番 ニ短調 《合唱》

指揮  :小林研一郎
パイプオルガン:勝山雅世
ソプラノ:菅 英三子
アルト :相田 麻純
テノール:錦織 健
バス  :青戸 知
合唱  :東京音楽大学

 普段の定期演奏会と比べて入り口の混雑具合がすごい。さすが第九。チョコレート屋さんの売り上げの何割かがバレンタインデー前に集中するように、日本のオーケストラの売り上げの何割かは年末の第九なんだろうな、などと考えながら席に向かう。今回は初めての席。2階RD席の1列目。前が通路なので視界が開けているがさらにその前の座席の上のパイプが少し舞台にかかるがほとんど問題ない。座席もほとんど埋まっているなぁ。

 サントリーホールのオルガンは初めて聴きました。どちらも名曲なので、うわーきれいだなぁ、などと思いながら聴いていましたが、頭の中は第九で一杯なので感動は薄かった。食前酒のようなものかな、と最初は思っていたが、美味しい和食をいただく前にりんごジュース飲まされたようなそんな感じ。前座みたいで、なんだかかわいそうでした。

さて休憩の後は第九。

う~ん、へたくそ~、っていうのが第一印象。
コバケンさんが最初から情熱的過ぎてオーケストラがついていっていないのかな、なんて感じました。各パートの音が噛み合っていなくて勝手に音を出している感じ。一番気になったのはティンパニ。目立つからね。リズムがずれてたりしてとても歯がゆかった。このまま終わらないで~と祈る気持ちでした。

第二楽章が終わって静かな第三楽章に入ったら、あれ?日フィルの弦はこんなにきれいだったかな?と思った。おっ、調子でてきたか?なんて少し期待してきました。

第四楽章。出だしで息が止まりました。う~んすごい。第四楽章の出だしはいつも不満に思っていて、なんだか失敗しているように聴こえる演奏ばかり。もともとベートーベンの作曲が悪いのか、ガシャガシャガシャガシャ、って感じで始まる。でも今回はリズムがしっかりしていたように感じた。聴いていて気持ちよい第四楽章のスタート。思わず引き込まれました。その後もメンバー変わったか?と思うほどシマリのある演奏。一体何がおきたのでしょう?よかった、最後に聴かせてくれた。でもずいぶんクセのある演奏だったように思う。ちょっとドラマチックすぎて。NHKの朝のニュースでつまらないギャグ聞かされ恥ずかしさを感じるような、そんなわざとらしさみたいなものを感じました。ちょとそこ、溜めすぎじゃないの~、そのテンポの変化はちょっとやりすぎじゃないの?とか、感じないではなかったけど、第一、第二楽章の演奏からはウソのような息の合った演奏に、いちいち寒気を感じている場合ではなかった。すっかり入り込んでしまいました。全休符(?)にしてもテンポの変化にしてもきれいにそろっていたからね。

バスの出だしも迫力があってよかった。P席の直下(オーケストラの後ろでティンパニの隣)に4人並んで歌っていたけど、後ろが壁のせいか、声がよく聴こえた。逆に錦織さんは期待していたけど声があまり通っていなかったように思う。第九は苦手なのかな。

合唱とオーケストラのバランスはよかった。12月定演のブルックナーみたいにバカ鳴りではなかったし、合唱の迫力もあったし。でも長く伸ばす音の最後の子音(発音記号で書くと[kt]みたいな音)がバラバラバラバラって聞こえたのが気になった。N響の演奏会では感じたことなかったけど。あれは何だったのだろう。

P席に座った合唱のメンバーがどこで立つのだろう、と、これも気になっていた。N響よりもずいぶん早いタイミングで「すっ」っと音もなく立ち上がりライトがついた。統一の取れた音のない動きは見事だったが、演奏の途中だったので少し気が散った。タイミングはN響のタイミングが好きだな。

出だしは最悪だったけど、最後ばっちり決めて、「終わりよければすべてよし」の演奏だったと思う。演奏者を立たせるのも最後のこばけんさんの挨拶も、好感が持てました。

第四楽章に限って言えば、ずいぶん癖のある演奏だったように思う。N響の第九を何年か続けて聴いてきていろいろな指揮者が来たけど、どの演奏も無難で美しく大きな個性は感じなかった。これは、名曲になればなるほど各オーケストラの味が決まっていて指揮者の味付け部分が少ないのではと感じた。日フィルの演奏はどうなんだろう。今回はコバケンさんの味なのか、日フィルの血なのか。次に日フィルの第九を聴くときに自分の耳で確かめてみたいと思う。

ちなみに。みさちんは感動の嵐だったらしい。N響では感じなかった感動に襲われたとのこと。音楽の歴史とか、作曲者のこととか演奏者のこととか、いろいろと知りたいし勉強したいと思うし、それがとても奥深くて魅力を感じるけど、そういうことと感動することは全く別だね。生の音楽を聴いて感動して涙を流せたら、それだけで十分なように思う。そもそもいろいろなことを知りたい、って思うのは大きな感動を得たいからで、勉強したことで理屈っぽくなってあら探しして、感動できなくなったら本末転倒。そうならないようにますます音楽を楽しめるようになりたいです。

おしまい。

今年の演奏会スケジュールもすべて完了です。来年もよい年でありますように。

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