演奏会日記

ブラームス 至極の室内楽

第11回 横浜山手芸術祭 オープニングコンサート
「ブラームス 至極の室内楽」

2017年1月29日(日)18:00
ベーリックホール

モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラ(チェロ)のための二重奏曲 ト長調 k.423
モーツァルト (鏡、という、ヴァイオリンの二重奏)
ブラームス 弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品51-2
ブラームス 弦楽六重奏曲 第2番 ト長調 作品36

依田真宜(ヴァイオリン)
鍵冨弦太郎(ヴァイオリン)
戸原 直(ヴァイオリン・ヴィオラ)
田原 綾子(ヴィオラ)
加藤 陽子(チェロ)
山本 直輝(チェロ)



室内楽って、その言葉の通り「室内」で聴くのがいいなと思う。

ベーリックホールは観客60人でいっぱいになるくらいの広さ。かつての外国人私邸のリビングで、まさに「室内」だ。大きなホールと違い、楽器の振動が肌で感じられる。木の床からはチェロの響きが伝わってくる。演奏者の息遣いも感じ、なんとも贅沢。

そんな中で聴くモーツァルトとブラームスはすごい迫力だった。
若くて物静かな印象の演奏家たちの、いったいどこから、こんなパワーが出てくるのだろう。

特にブラームスは、録音では退屈な印象を持ったのに演奏ではすっかり引き込まれてしまい、自分でもびっくり。生演奏のすごさ。

四重奏曲も六重奏曲も、ヴィオラの音がとても魅力的だった。ブラームスは中低音が大切だと聞いてていたが、今回間近でヴィオラの音を聴いて「このことか」と腹落ちした。艶めかしく、腹の底から突き上げるような音色にすっかり参ってしまった。ヴィオラが弾いていて一番楽しいのではないかな、と思ったくらいだ。

アンコールではブラームスの六重奏曲 第1番から第3楽章を弾いていただいた。
これも聴きたかった曲だったのでうれしかった。

そういえば、モーツアルトの「鏡」という曲、不思議な曲だった。
1枚の譜面を上下から見て、2人で演奏する。
こんな曲があるのか、とモーツァルトの天才ぶりを改めて感じた。

素晴らしい演奏会でした。
ブラームスの弦楽合奏をこんな「室内」でまた聴ける機会を楽しみにしていよう。

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大阪フィルとアンドリス・ポーガさんの第九

2016/12/30(金) 19:00 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー管弦楽団
第9シンフォニーの夕べ

ベートーベン        交響曲第9番 ニ短調「合唱付」作品125

指揮   : アンドリス・ポーガ
ソプラノ : 中村恵理
アルト  : 福原寿美枝
テノール : 福井敬
バリトン : 甲斐栄次郎
合唱   : 大阪フィルハーモニー合唱団


初めての大阪フィルを初めてのフェスティバルホールで、久しぶりの第九。

奇抜ではなかったけど、重厚なドイツ音楽の上に指揮者のポーガさんの味付けだろうか、切れと勢いが加わって退屈しない演奏だったし、共感できる作り方だった。ポーガさんについての予備知識がないまま演奏を聴いてみて、この明解さはもしかして「カリフォルニアワイン」か?と思ったが外れた。ラトビア出身でヨーロッパで活躍とのこと、まだ若そうなポーガさん、これからが楽しみだ。

オーケストラはとても丁寧な演奏に思えた。パート毎にとてもまとまっていたように思うし、乱れることもほとんどなかったのではないか。技術的には期待以上で満足。

独唱も素晴らしかった。

バリトンは代役として甲斐さんだったがいつも通り迫力だった。テノールの福井さんとのコンビは気心が知れているのだろうか、ソプラノ、アルトも含めて息がぴったりあっているように思えた。ソプラノの中村さんの声も素晴らしかった。

合唱は妻が絶賛だった。学生にはない迫力と正確さに私もすごいな、と思った。「蛍の光」をペンライトを手に歌うのがお決まりのアンコールなのだろう、心洗われる歌声だった。第九の余韻に浸りながら会場を後する方が好みではあるけど。大阪って「おまけ」の文化なのかな。

座席は3階の最前列、いい席だった。よく響くホールという印象を受けたが、聴き慣れたサントリーホールほど華やかさを感じなかった。いい意味でも悪い意味でも。

首都圏以外でも素晴らしいオーケストラがあることを知り、いい演奏が聴けたことがうれしかった。日フィルの演奏を聴き慣れているので、他のオーケストラの演奏も聴いてみることで新しい発見も生まれてくるかもしれない。



Osakaphil

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キリン・フィルのベートーベンとドヴォルザーク

2016年9月4日(日)14:00
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
キリン・フィルハーモニー管弦楽団オータムコンサート2016

ワーグナー 歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
ベートーベン 交響曲第1番ハ長調 作品21
ドヴォルザーク 交響曲第8番 作品88

指揮:高山 美佳
キリン・フィルハーモニー管弦楽団

キリン・フィルの演奏は今回初めて聴かせていただいた。同じように会社勤めをしている人間として、共感し楽しい演奏会だった。プロと違い、普段は別の仕事を持ちながら余暇の時間で練習をして、演奏会を開催できるレベルまで持っていくのは並大抵のことではないのだろう。しかも楽しそうに演奏していらっしゃる姿を拝見し、音楽って楽しむものだよな、と改めて思った。

弦が重厚な音を響かせているのが驚きだった。そのせいか、どちらかというとベートーベンを演奏しているときの方がが私は好みだった。もしかしたら指揮者の高山さんもベートーベン好きなのかな、と思ったりもした。前回のブラームスもなかなか感動的だったと妻から聞いていたこともあり、次の演奏会も選曲含めて楽しみだ。

彩の国さいたま芸術劇場の音楽ホールは初めてで、1階席ど真ん中に座らせてもらった。座席数も少なく小さなホールでアットホームな雰囲気も漂う。サントリーホールほどきらびやかではなく、かといって地味でもなく、心地よい響きだったように感じた。バッハとかモーツァルトとか、小編成オーケストラの演奏も聴いてみたくなった。

パンフレットは生駒さんのFacebookから借用しました。
無断ですみません!

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大友さんと日フィルの第九

2015/12/19(土) 18:00~ 横浜みなとみらいホール
日フィル 第313回横浜定期演奏会

G.ロベルト  トランペット協奏曲《Tokyo Suite》
ベートーヴェン 交響曲第9番《合唱》

指揮    :大友 直人
ソプラノ  :青木 エマ
アルト   :小川 明子
テノール  :錦織 健
バリトン  :宮本 益光
合唱    :東京音楽大学

トランペット:オッタビアーノ・クリストーフォリ

都合で東京定期からの振り替えで久しぶりの第9を楽しむことになった。私にとっては新鮮な第九だった。

前半はトランペット協奏曲。ずいぶんぜいたくな演目だ。

何と透明感のある曲だろう、というのが第1楽章出だしの感想。曲のせいか、指揮のせいか、ホールのせいか、わからない。聴きやすくて、これが今の時代の現代音楽だな、と感じる。かつての理屈っぽくて変拍子で不協和音バリバリの曲より親しみやすくていい。

曲の印象はよかった一方で、1、2楽章はトランペットのノリが少し悪かったように感じた。いつものオッタビアーノさんらしくない印象。オーケストラにおいてけぼりになっているというか。2楽章は確かに、美しい。

3楽章は原宿をイメージしたとのことだが、それよりはメリーゴーランドを連想した。楽しい曲だった。

全体的にいい曲だとは思ったが、「Tokyo Suite」というほど「東京」をイメージできる音を感じにくかった。でも伝統的な和音やメロディーを用いることだけが日本を表現することでもないだろう、とも思う。
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考えてみると第九を聴くのは久しぶりだが、日フィルの第九は本当に久しぶり。前回は、こばけんさんの演奏だった。大友さんの演奏は全く逆の印象で、知性的で冷静、ここで感動してください、という押しつけ感もなく安心して聴くことができた。

まるでモーツァルトのよう。音が丁寧、安心して聴ける、知的で各楽器がきちんと演奏することで全体の音楽を構築しようとしている、そんな印象。

音楽が重々しくなく軽やかで、特に2楽章などモーツァルトのようだなと感じた。楽器ひとつひとつの演奏を勢いでごまかすのではなく楽譜通りに丁寧に演奏することで全体の曲が構築されているような印象だ。だからこそ曲全体の透明感を感じ、そういうところにモーツァルトを感じたのかもしれない。

全体的には金管が目立つ演奏だな、とも感じた。弦が目立つところは目立っていたけど、聴こえ方が自分が耳馴れている第九と違う印象を持ったところが多かった。

そういえば2楽章のオーボエは全体の中でも特に印象深かった。ニュアンスというのか、音がまるで人が話しをしているようで。4楽章最初のチェロとコントラバスの旋律も表現が豊かだったな。

合唱は若さのせいか、とても瞬発力のある声だった。大友さんもそこを強調していたようにも感じる。パンパンパンとはじけるように出てくる音から元気をもらった。ありがとうございました。

ソロの歌手の中ではバスの宮本さんの声に感動した。最初のソロのところの登場感がすごかった。オーケストラに埋もれることなくスゴイ声量だった。反対に錦織さんはもういいです。迫力を感じない。若手のやる気ある人の声が聴きたいなと思う。

今回は妻もよく似た感想を持った。それでも言葉にするとこんなに違うのか、と思いそれがまた面白かった。以下は妻の言葉。
「ウィーン風の第九だね。弦楽器は弓の当たり方が軽やかで引き上げられる感じ。でも音はしっかりしててそのバランス感がすごい。」
「1年を振り返るのではなく、来年はどんな1年になるかな、って希望を持たせてくれるような演奏だった。いままでこんな気持ちになったことない。」

全体的には、合唱もオーケストラも完成度が高いということはなかったのかも知れないけど、感動するというのはまた別次元なんだろう。私たちにとってはいい演奏会でした。

ところで、年末のこの時期は日フィルも連日第九の演奏会なのだが、指揮者は大友さんとこばけんさん、合唱もいくつかの団体が混在し、ソロの声楽家もさまざま。こんな状況でどうやってリハーサルして音作りするのだろうか。指揮者2人が一緒にリハーサルに来て、「こばけんさんがこうやるなら、私はこういう風に」なんて、相談しながら?まさかね。テンポも作り方も全く違うのだろうから混乱しないのかな、なんて思った。余計なお世話か。
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神奈川フィル 児玉さんのモーツァルト39番とブルックナー4番

2015/9/20(日) 14:00~ みなとみらいホール
定期演奏会 みなとみらいシリーズ 第312回

モーツァルト 交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
ブルックナー 交響曲 第4番 変ホ長調《ロマンティック》

指揮    : 児玉 宏

妻と私のワインの師匠からお誘いを受け、初めての神奈川フィルの演奏を堪能した。

神奈川フィルの弦は表現力が豊かで美しい音だったので心が洗われた。

モーツァルトの2楽章、ブルックナーの2楽章は特に美しかった。細かいところにまで気を配り、ピチカートまでぴったり息があっていたのは素晴らしかった。
日フィルでもこんなに息のあった演奏は聴いたことがないと思う。小さなフレーズにまで繊細な抑揚やテンポの揺れを気遣っているのを感じ、小澤さんの指揮でも同じことを感じたのを思い出した。こういうのをニュアンスというのだろうか。これは児玉さんの指揮によるものだろうか。

ブルックナーの4番は過去、N響、読売響で聴いたが、今回は初めて感動できた。過去のどちらの演奏もボロボロのホルンが曲全体をダメにしていたように思った。今回のホルンは音は固かったけど、それでも最後まで頑張り抜いたし、他の楽器もバックアップして演奏全体を引き締めてくれた印象。ホルンはじめ、オーケストラの頑張りに拍手!感動を呼び起こす源って技術だけではない、と改めて思う。

残念だったのは、強音のところで音が汚く感じたこと。ホールも聴き慣れたサントリーホールと違うので簡単な比較はできないけど、こばけんさんが日フィル振った時も同じように感じる。やっぱり何かが違う、のだと思う。

地元なのに初めての神奈川フィル、丁寧で真面目で一所懸命。堅実でずっしりがっしりした児玉さんの指揮。どちらもかなり好印象だった。素晴らしい時間をありがとうございました。これれらもがんばってほしいです。

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外山さんの《まつら》、ベートーベン、バッハ

2014/12/6(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第666回東京定期演奏会

外山雄三   交響詩《まつら》
ベートーベン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 《皇帝》
J.S.バッハ(ストコフスキー編曲)
       トッカータとフーガ
       カンタータ第208番より アリア《羊は安らかに草を食み》
J.S.バッハ(レスピーギ編曲)
       パッサカリアとフーガ

指揮  : 外山 雄三
ピアノ : 小山 実稚恵

外山さんはかつての日本のクラシック音楽を引っ張ってくれた恩人だと思いますが、時代の求める音楽は変わっています。今日も実直な演奏ではありましたが、外山さんの指揮ではもう今の世代の心を動かすことはできないと思います。いつの間にか、日本のクラシック音楽は師匠である外山さんを追い越してしまいました。変化し進化し続けることがどんなに大変で重要なことか、今日の演奏会で強く感じました。

そしてクラッシック音楽は単純に古典の楽譜を音に直すだけでなく、演奏者がどのような意思を持って再現するのかが面白く、自分はそこに興味を持っていることを知りました。

ありがとうございました。でもさようなら、です。

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《まつら》は日本人の心を動かす素敵な曲だと思う。日本の民謡に興味がない自分でさえ心地よく感じる。遠くで聞こえる祭囃子、夕暮れの蜩の鳴き声、そんなものを思い起こさせる。一方で曲の冒頭のコントラバスのピチカートがバラバラだったり 、ところどころの管楽器がプスッて出遅れたり、ちょっと緊張感が足りないのが残念だった。いい曲なのに何か勢いみたいなものが足りないように感じた。

《皇帝》の小山さんのピアノは、期待通り迫力と繊細さを併せ持った魅力ある素敵な音だった。1楽章のカデンツァの迫力はスゴかったし、2楽章の繊細さは胸がきゅんとなる感じ。さすが小山さんだ。でもオーケストラはというと、どこかしっくりこない。なんでなんで?《まつら》に比べて編成が小さいから?そんなことじゃない、マイルドすぎてキレがない、ピアノとの一体感がない。爆睡の予定だった妻もその理由に悩まされ寝れなかったとのこと。それは妻にとってよかったのか、悪かったのか。

バッハは、興味深かった。私はストコフスキー編曲の2曲が、妻はレスピーギ編曲の1曲がよかった、と意見が割れた。ストコフスキーの《トッカータとフーガ》は音の厚みと透明感が両立しているようで、スゴイと感じた。レスピーギは攻めてる感じはするけど音がごちゃごちゃしすぎ、そんな印象。でもどちらの編曲もすでにバッハの神々しさは感じれず、むしろ現代社会の矛盾に悩む我々の気持ちに共振するようで、マーラーに近い。時代の変化を意識させるこんな曲を外山さんが振ることもまた、皮肉だ。

演奏の後の外山さんのあいさつは控えめだった。観客の拍手や「ブラボー」の声の真ん中にいつもいない。指揮台にあがることもない。静かにオーケストラを立てて自分は影に。謙虚な外山さんの姿を見て拍手に力が入る。大好きだった女の子に自分からさよならしたような(そんな経験ないけど)、胸が痛む演奏会だった。chair

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日本舞踊とオーケストラ〜ペトリューシュカなど

_1_42013/10/3(木) 19:00〜 東京文化会館 大ホール
構成・演出:花柳壽輔
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
指揮:渡邊一正

演目:
ペトリューシュカ (ストラビンスキー作曲)
展覧会の絵(清姫) (ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲)
プレリュード(ドビュッシー作曲、ブレイナー編曲)
  前奏曲集第1集より「亜麻色の髪の乙女」「雪の上の足跡」「沈める寺」
ボレロ(ラヴェル作曲)

_2_3たまたまNHK BSで観たペトルーシュカの舞台に感動し、発売していた今回の公演のチケットに妻が飛び付いた。西洋音楽と日本の伝統芸術の融合は、黄緑色野菜と果物のミックスジュースのように新鮮で不思議な味だった。

4つの舞台とも日本文化と西洋文化がそれぞれ特徴的に重なりあって心に残る舞台だった。

ペトルーシュカでは最初から日本舞踊のための音楽か、と思わせるほど心の底から楽しめる舞台だった。それぞれの人形の心の動きがぎこちない仕草で表現されていた。特にバレリーナ人形は日本女性そのもの、しかも何と音楽と合うことか。西洋画の背景に日本画を描くことで余計に日本文化が強調された印象。

 

展覧会の絵では、舞台の日本的な美しさと最初の和楽器を使った演奏が印象的だった。特に和楽器は古い音楽のはずなのに無調の現代音楽にも聞こえる。武満徹が和楽器を現代音楽に使いたくなった気持ちもわかる気がする。

 

プレリュードでは、森の木々を揺らす風の音が音楽と舞台を作り出していた。フランス印象派の音楽かも知れないけど日本の心でもある。

 

ボレロは圧巻。背筋がぞくぞくした。群舞によって舞台から聞こえる衣擦れの音も音楽の一部として効果的だった。テレビで観た前回の舞台では中央で一人の躍り手が躍り続けたが今回は群舞の中から次々に中央に上がって踊っていた。変化があって今回の方が面白かった。

 

ペトルーシュカはストーリー性があったため物語としても楽しめたが、それ以外は心の奥底に深く突き刺さってくるような精神性を強く感じた。言葉にするのは難しいけどなんだか気持ちを揺さぶられる、という。これが本当の芸術か。日本人であることを誇りに思えるような、不思議な感覚だ。

 

東京文化会館で演奏を聴くのは久しぶりだった。オペラハウスのような馬蹄形であることを改めて思い知った。今回は4階席の3列目、舞台に向かって右側。手すりが低くて最前列でも邪魔にならない分ちょっと怖くてお尻がムズムズするが、そのわりには音がすぐ近くで聞こえる。音ってやっぱり上に上がってくるんだ。響きはかなり控えめでサントリーホールとは両極端の性格と感じる。ウィーンの国立歌劇場に近い。そのせいかドビュッシーの音楽はくっきりはっきりしすぎてちょっと残念だった。もう少し演奏で工夫できないのかな。建物の歴史もあり、ウィーンほどではなくとも重厚感もある。ここでオペラを楽しむのもいいなぁ。でもオーケストラの演奏は華やかさを感じることがほとんどなく、ちょっとした間違いも目立つので演奏者は辛いかも。これだけ響きが違うと同じ演奏者でもホールによってバランスや音量を変えるのだろうな。

 

今日の東フィルの演奏を聴いて思ったのは、そんなごまかしの利かないホールであることを考えた上でも、毎月聴いている日フィルの演奏ってかなりスゴイ、ということ。何年もステージの近くで聴き続けてヒイキが入っていることは否定しないけど、演奏の勢いというか何か熱いものを感じるんだな。

 

ともかく刺激的な体験であったことは間違いない。またこんな機会があるといいな。mist

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フランシスさんのアダムス、ブリテン、チャイコフスキー

12/8(土) 16:00~ サントリーホール
日フィル 第646回東京定期演奏会

アダムス  主席は踊る~オーケストラのためのフォックス・トロット
      (オペラ《中国のニクソン》より)
ブリテン  シンフォニア・ダ・レクイエム 作品20
チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調

指揮  : マイケル・フランシス

だいたい素晴らしい演奏会に出会うと胸キュン状態になって、何々の楽器は音をはずしただとかという些細なことは気にならなくなる。でもそういう演奏会に遭遇する可能性は高くはないし、有名な指揮者だからといって必ずそうなるとも限らない。ましてや前後半通してハートが釘付け状態になることはまぁない。

でも今日の演奏会はそんな感じだったな。
フランシスさんの日フィルデビューの演奏会と知り、そんなに息の合った演奏は期待できないと思い込んでいたが大間違い。予想もつかないいい演奏に出会えるのがオーケストラ音楽の面白いところかもしれない。選曲も演奏も素晴らしかった。

まず感動したのは弦の音の多彩さ。まずはブリテンの出だしでたまげた。ティンパニの強打に胸が締め付けられたがその後の弦の静かで優しい響きはかえって不安な気持ちを煽る。一転して泣き叫ぶような弦の響きは辛さや苦しみを訴えかけるようだ。かと思えばチャイコフスキーでは甘くて暖かい響き。かつて日フィルでこれほど表情豊かな弦を聴いたことがあったかなぁ。ええっこんな音できましたか!?と驚かされること数回どころではなかった。

次には音量のコントロールの見事さ。前にも書いたブリテン出だしのティンパニの強打とその後の静かな響きのギャップ、大きい音でも美しさを保ち、小さい音は丁寧に優しく、コントラストがはっきりしている。ブリテンの最終楽章はまさに「救いの美しさ」だと思うが、消え入るような最後は特に緊張感があって息をのんだ。

さらには唄う旋律。チャイコフスキーの第2楽章は超メランコリックでありながら嫌味ではない。オーボエの旋律が色々な楽器に引き継がれていくが微妙なテンポの揺らぎがあり人が歌っているよう。

こんなフランシスさんの指揮はまた見ていてとてもおもしろい。全身の動きで音楽を伝えている感じ。アダムスやブリテンでは比較的拍子をしっかり取った私たち素人にもわかり易い指揮だったのに比べチャイコフスキーでは流れるような美しい姿。その第3楽章では指揮棒を置き弦楽器の小刻みなピチカートを見事に揃えていた。あのような曲こそ指揮棒が要るのでは、と考えるのは素人の浅知恵なのか。また何度も書くがブリテンの出だしのティンパニではラジオ体操の「胸を開く運動」のような動きをし、見ていて何を伝えたいのかわかり易い指揮であった。

世界中にはまだまだ若くて素晴らしい指揮者がいっぱいいるのだ。そんな指揮者が日フィルと化学反応を起こしてゾクゾクするような演奏を聴かせてくれるのが楽しみだ。フランシスさん、是非また来てくださいね!

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ラ・フォル・ジュルネ2012 タチアナさんとパリ室内管弦楽団

5/5(土) 12:15~ 東京国際フォーラム ホールB7
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012 No.322

ストラビンスキー  弦楽のための協奏曲 ニ調
ショスタコーヴィチ チェロ協奏曲第1番 変ホ長調

チェロ :タチアナ・ヴァシリエヴァ
指揮  : ジョセフ・スヴェンセン
オーケストラ: パリ室内管弦楽団

 2008年10月にN響+エンリコ・ディンドさんのチェロの演奏で初めてこの曲を聴いた。自宅にはマイスキーさんのCDがあるが、ディンドさんの演奏は音量と迫力があって荒々しく、感情を叩きつけているようにも感じられ、演奏会でもとても興奮した覚えがある。マイスキーさんの演奏はCDで聴く限り、情熱的ではあるがロマンティックで美しい音だと感じる。ヴァシリエヴァさんの演奏はどちらかというとディンドさんよりマイスキーさんに似ているかなと思う。とても美しい音だ。オーケストラのきれいな弦と響きあい同系色のハーモニーだったと思う。私の好みはフォービズムの絵のように原色の赤と緑がベットリ塗ってある、少し毒々しいくらいが好きだ。印象派の絵のようなパリ室内管弦楽団の演奏に原色の赤と緑で人物画を描き加えたような、ディンドさんのチェロがもう一度聴きたくなった。

 ホールB7はほとんど反射音がなく、本当の生の楽器ってこんな音なんだな、と改めて感じるくらい。印象派の点描の絵を近くで観ているのに似ているかも。それぞれの楽器の音が別々に聞こえてくる混ざりけのない美しさか。私としてはもう少し反響して混ざった方がいいように思った。

 5/2の前夜祭は、反対に5,000人収容の巨大なホール。こんなに大きなホールは初めての体験だった。係の方に座席を案内されながら、こりゃひとりじゃ席を見つけられないかも、って思った。音は期待していなかったが、思ったより反射音があり、きれいに響くなぁ、と感じた。座席は2階右側の前でもなく後ろでもなく、右側の真ん中あたり。ステージが小さい。でもその割にフルートやらトライアングルやらの高音はすごくよく聴こえる。最初の都響の演奏で気がつかなかったけど後半のパリ室内管弦楽団の演奏を聴いて、ああ、低音が届きにくいんだ、って気がついた。都響のチャイコフスキーは私にとっては思わずじーんとくるよい演奏だったが、後半のパリ室内管弦楽団を聴いてコントラバスとチェロの音がよく聴こえるのにびっくり。それぞれのオーケストラができなくてやらないのか、知っていてやっているのか、はわからないが、パリ室内管弦楽団の方が音がしまっていい演奏に聴こえた。パリ管弦楽団のチャイコフスキー弦楽セレナーデ第3楽章を演奏し終わった後、ほぼ満席に近いホールがの息をのんだ静寂に包まれたのも素敵な体験だった。

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シューマンとブラームス

1/21(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第637回東京定期演奏会

メンデルスゾーン  序曲《美しきメルジーネの物語》
シューマン     ピアノ協奏曲 イ短調
ブラームス     交響曲第1番 ハ短調

指揮  : ラン・シュイ
ピアノ : 田部 京子

「クララ・シューマン 愛の協奏曲」という映画を2009年に観た。その時はあまりいい印象はなかったけど、最近になってシューマンとブラームスの曲を聴くたび、その映画を思い出す。中学校の音楽室に飾ってあった絵でしか知らなかった2人の作曲家のイメージが変わった映画だった。映画なのでフィクションの部分が多いと思うけど、シューマンとブラームスのキャラクターは意外に正確だったのではないか、と勝手に思っている。

調べてみると田部さんのピアノはどうやら初めて聴いたようだ。マイルドで優しくて、シューマンがクララを想って作った曲だとしたらその演奏にはぴったりだと思った。華やかさはあまり感じなかったけど、オーケストラもそんな田部さんに合わせるように優しく、控えめな音だったように思う。特に第2楽章はキレイだった。どちらかというと地味目な演奏は日フィルらしくない、聴いている方としてもちょっと不完全燃焼、という気もしないではなかったけど、11月のラザレフさんと岡田さんのショパンのように、協奏曲としてはバランスのとれた演奏だったように思う。そう、協奏曲はソリストとオーケストラのバランスがとても大事だと思うから。ちなみに妻は隣でバクスイしていた。

後半のブラームス、頭がスッキリした妻は絶賛していたが、私は自分の持っているイメージとちょっと違ったかな、と感じた。金管と、なんとなく軽めのティンパニが強くて、どちらかというと華やかな音であるように感じた。自分は重厚さと若くて純粋な甘さのあるブラームスを期待していたので、こんなブラームスもあるんだな、と思った。特にティンパニは大活躍するだけにもう少し渋い音だったらよかったのにな、と思った。また第2楽章のヴァイオリンソロはあまり好きな音ではなかったかな。とはいえ第4楽章は特にスッキリ感は強かったので決して悪い演奏ではなかったと思ったし、自分の持っている日フィルの音のイメージだった。

今週は仕事が忙しく、睡眠不足と疲労が溜まって回復できないまま当日を迎えた。リフレッシュにはなったけど自分の感性にビビッっと訴えてくることはあまりなかった。十分な気力と体力がないと感じることができるものもできなくなる。音楽を味わうには十分な睡眠が重要だ。一晩寝ただけじゃ回復できないのは歳のせいか!?

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