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小澤征爾音楽塾の《フィガロの結婚》! その1

2014/3/16(日) 15:00~ よこすか芸術劇場
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXII

 

モーツァルト 歌劇《フィガロの結婚》<オペラ・ドラマティコ形式>

 

アルマヴィーヴァ伯爵:クレッグ・ヴァーム
伯爵夫人      :シャーン・デイヴィース
スザンナ      :デヴン・ガスリー
フィガロ      :ウェイン・ティグス
ケルビーノ     :リディア・トイシャー

 

指揮        : 小澤征爾、テッド・テイラー
チェンバロ     : テッド・テイラー
小澤征爾音楽塾オーケストラ&合唱団

 

今の世の中、リアルなものとバーチャルなものがあって、どちらを欠いても生きていけない。ケータイは距離と時間を縮めるタイムマシンだけど、気心知れた知人とはたまには会って酒でも飲まないと満足できない。そういうことだ。

 

そんなリアルとバーチャルのご機嫌を取りながら日々の生活に追われているが、今日はリアルなものに夢のような一日をプレゼントしてもらった気分だ。

 

初めて生で観た小澤さんの指揮は魔法使いのようだった。昔テレビで観た髪を振り乱しての大きなジェスチャーはないのだけれど指先からビームが出ているかのようにはっきりくっきりしていた。そのせいか、特に1幕では小澤さんの指揮とテイラーさんの音の違いを感じられたように思う。小澤さんの音はパンチがあって抑揚が大きく小さなフレーズにも色をつけてどちらかというとモダンな感じ。テイラーさんは穏やかで歌手を邪魔しない、でもしっかりした古典的な音のように感じた。とはいえ第2幕以降で確かめようと舞台そっちのけでずいぶん真剣に聴いたがだんだん違いが判らなくなり自信がなくなった。さて実際はどうだったのか。

 

でも間違いないのはオーケストラのメンバーが指揮者の指示を的確に表現する技術をもっていたこと。細かいことを言い出せば気になるところはいくつかあったけど、舞台を観ていてもググッとオーケストラの音に神経が集中し目がおろそかになるシーンがいくつもあった。若い寄せ集めのメンバーといえばそれまでだけど経験値と伝統が足りないだけで、まただからこそ面白いのではないか、と思った。

 

相変わらず目と耳が両立しないのが悔しいが、貯金箱壊してようやく手に入れた座席だから損してなるものか、という卑しい根性がいけない。オペラを楽しむには、また来ればいいや、と腹をくくる男気が必要かもね。

 

歌手のみなさんにも泣かされた。特にフィガロ役のティグスさんには感動。声量が大きく迫力があった。全体的に男性歌手の方が存在感があったように思う。女性歌手では伯爵夫人役のデイヴィースさんが好きだ。2幕、3幕でのアリアは素晴らしかった。でも何故か、一番うるっときたのは、手紙の二重唱(そよ風に寄せて)だったのはなんでだろう。その後拍手したかったのにできなかった。アリアの時以外はしないものなのだろうか。周りの拍手に合わせることしかできない私。

 

話はそれるけど先日学生時代からお付き合いいただいている、趣味でクラシックギターを弾いているNさんと久しぶりに音楽の話で盛り上がった時に、こんな話をしてくださった。『何かを表現しようとすると間違うリスクが高くなる。かといって間違わないように、とばかり考えると何も表現できなくなる。もちろん間違わないのは一番いいけどそのために何も表現できなければ(アマチュアとして)演奏する意味がない』という趣旨の話を聞き深く納得した。今日演奏していた方々はプロの方々なのでもっと高いレベルのことを考えているのだろうけど、我々聴く側の人間も、ただ間違ったから下手、といった単純な判断ではなく、自分の心をどれだけ揺さぶってくれたか、ということに神経を集中したいものだ。

 

続く

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