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僕はいかにして指揮者になったのか (佐渡裕著)

年末の古本屋で何気なく手に取り、そのまま購入してしまった。数日机上に積んであったが、ある休日に一気に読み終えた。

1995年初版の本なので佐渡さんがまだ34歳のころの執筆だ。普段私が音楽について思うことがいっぱい書かれていてとてもうれしく思った。

演奏会に行くことの素晴らしさを実感したのはNHK交響楽団の定期演奏会の年間会員になってからだ。毎月同じホールの同じ席で同じオーケストラの演奏を聴いていると、とても感動するときと退屈なときがあることに気がつく。日本フィルの定期演奏会を聴くようになって正しい音を出しているかということと感動するしないは必ずしも一致しないこともわかった。いろいろな方のブログを拝見すると同じ感想を持つ方がいる反面、まったく逆の感想をもつ方もいて、音楽を作り上げる側と受け取る側両方の都合でその演奏会の良し悪しは決まるのだなぁ、と実感する。極論すれば聴く側のいい音楽に出会いたいという欲求が感動的な演奏会との出会いのすべてと思える。

佐渡さんは『日本の指揮者やオーケストラの中には、音を完璧に"合わせる"という意識が先立ってしまい、音楽そのものを楽しもうという気持ちが感じられないことが少なくない』と書いている。私自身は海外のオーケストラを聴く機会がそれほど多くないのでそれが事実かどうかはわからないけれども、感動するときは、音が合っているかどうかということよりも、もっと直接的に胸に響いてくる何かが確かにあるような気がする。

そういえば、表紙の裏に佐渡さんのサインと、『1998.12.23 ベートーヴェン 第9 終演後 東京芸術劇場 楽屋にて』と丁寧な字で記載があることに気がついた。元の持ち主が楽屋を訪れいただいたサインなのだろう。どんな気持ちでこの本を購入し楽屋でサインをもらい、そして古本として処分したのか。そんなことは私の知る由もないが自分自身の音楽との出会いや演奏会との一期一会と重なり胸が少しだけきゅんとなった。

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