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インキネンさんとバイロイト音楽祭出演の歌手たちによる《ワルキューレ》

2013/9/7(土) 16:00~ サントリーホール
日フィル 第653回東京定期演奏会

ワーグナー  ジークフリート牧歌
ワーグナー  楽劇《トリスタンとイゾルデ》より前奏曲と愛の死
ワーグナー  楽劇《ワルキューレ》より第1幕

指揮  : ピエタリ・インキネン
ソプラノ: エディス・ハーラー
テノール: サイモン・オニール
バス  : マーティン・スネル

ワーグナーの良さがまったく理解できない私でさえこれほど感動したのだから、ワーグナー好きが興奮のあまり立ち上がって拍手したとしても気持ちは十分理解できる。通勤時間に録音を何度聴いても何がよいのかさっぱり理解できず、さすがに今回は前後半通してバクスイか!と覚悟していたのに何ということだ。すごい経験をさせてもらった。やはり音楽はライブでないと伝わらないものがたくさんあるのだ。

以前、ネルロ・サンティさん指揮のN響でプッチーニ作曲の《ラ・ボエーム》を演奏会形式で聴いたのがオペラに興味を持ったきっかけだった。遠く3階席で感じたあの感動も忘れないが、今回の演奏にはかなわない。

そんな訳で《ワルキューレ》の最初のテノール(オニールさん)の歌が始まって間もなく、私の目には次々と涙が溢れこぼれていた。若い女性ならいざ知らず、かわいくもないから止まれ止まれと思ってもどうしようもない。

N響のときは歌手はずっと立ったままだったが今回は小さいながらも身振りや動きが加わりより深く強く伝わるものがあった。さらにライトモチーフと言われるものだろうか、登場人物を思わせる旋律や剣を表現するときのキラキラした音はまるでそこにオペラのステージがあるかのように感じた。プロの仕事だ、と唸った。

歌手を支えるオーケストラも出だしから緊張感を醸し出し、歌手の3人を十分引き立てていた。オペラでは毎度のことだが、今回もあちこちに気がまわらずに歌手に意識が釘付け状態だったため、オーケストラに注意を向ける余裕はなかったのが毎度のことながら残念だ。それでもインキネンさんの指揮は音が繊細で美しいのはわかった。歌手が歌わない部分の微音の美しさはさすが。息を飲んだ。

私の場合ワーグナーの音楽を理解できないまま死んでいくのだろう、と思っていたが今日の演奏を聴いて、あれ?もしかしたら、って思い直した。いや、ただワーグナーのオペラを将来楽しむことになるかもしれない、という予感がしただけだ。こんなことで簡単に好きにはならないぞ。

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