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ラザレフさんと河村尚子さんのラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲など

2013/6/15(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第651回東京定期演奏会

ラフマニノフ カプリッチョ・ボヘミアン 作品12
ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
ラフマニノフ 交響的舞曲 作品45

指揮  : アレクサンドル・ラザレフ
ピアノ : 河村 尚子

河村尚子さんといえば、昨年3月の横浜定期、ラザレフさん指揮でのブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏が印象に残っている。第3楽章の力強さと、何より第2楽章の美しさ。今日もどんな演奏になるのかと楽しみにしていた。

期待を裏切られることなく、私にとっての今日のベストは「パガニーニ」だった。妻は「カプリッチョ」と「交響的舞曲」が好きなので今回は意見が合わない。

何といってもピアノとオーケストラの一体感。どちらかというと暖かく感じるピアノの響きとオーケストラがバランスよく溶け合い、絶妙な配合のアンバタサンドを食べているようだ。今年1月のハオチェンさんのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番でのとがった印象やオーケストラとの違和感は全く感じない。優しさと女性とは思えない力強さをあわせ持った河村さんのピアノに魅了された。有名な第18変奏は自分が聴いていた録音よりずいぶんあっさりしていたが、映画音楽のように押し付けがましくなく逆に心地よく思った。私も含めて熱狂的(と感じた)拍手に応えて演奏してくれたアンコールはバッハだったが、これまた夢の中に誘うような素晴らしい演奏だった。気がつくと会場の空気も一変、今度は幸せに満ち足りた春風のような拍手が響いた。数分の演奏でこれだけ会場の雰囲気が変わるとは。

演奏会全体を通して感じたのはラフマニノフの作品の音の厚さ。いままでは美しい旋律ばかりに気を取られていたけど、ブラームスのような重厚さもあるんだ、ということを改めて感じた。その基となるのはきっとラザレフさんの厳しいリハーサルによって生み出される一糸乱れぬ緻密な音の積み上げなのだろう。

特に「カプリッチョ」では加えて曲自体の濃厚さを感じた。20分ほどの間に多くの感情が詰め込まれ、それらがラザレフさんと日フィルのみなさんによって見事に引き出していたと感じた。チャイコフスキーはじめロシア音楽ってその傾向があるのかもしれないけど曲から湧き出る情念のようなものを如何に表現するかというのが演奏者側の力のみせどころであり、聴衆はその情念に如何に共振するかが感動するコツのように思う。演奏会全曲がラフマニノフというのもこれまた疲れるものだ。

そんな訳で後半の「交響的舞曲」では1楽章、2楽章はゾクゾクしながら聴いていたものの、3楽章では体力持たずしばし夢の国に出かけてしまったことは悔やまれる。もうひとつ、1楽章最後の微弱音で終わる、会場中が息を詰めて集中して聴いているときに客席からモノを落とした大きな音で邪魔が入ったのも残念だった。客席ももう少し演奏者に対して敬意を持ちたいものだ。

今日はこんな素晴らしい演奏を前に夢の国に出かけた自分を責めつつ、家路につくことになった。とほほ。cafe

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