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インキネンさんのマーラー3番

9/3(土) 14:00~ サントリーホール
日フィル 第633回東京定期演奏会

マーラー 交響曲第3番 ニ短調

指揮     : ピエタリ・インキネン
メゾ・ソプラノ: アンネリー・ペーボ
女性合唱   : 栗友会合唱団
児童合唱   : 杉並児童合唱団

演奏会が終わって帰宅しても暖かい感動に包まれていた。
じんわりと心に響く演奏だった。
どんなに素晴らしい演奏でも、録音は生演奏にはかなわないのだ。

 1楽章が終わったとき、もう帰ってもいい、って思った。演奏会の後に感想を聞いたら妻も同じことを思ったらしい。弦も木管も金管も音が美しい。お互いに響きあい、強奏してもうるさくない。バランスもいい。コンサートミストレスのヴァイオリンソロの何と美しいことか。後半でホルンのユニゾンが戻ってくる直前の盛り上がりの疾走感、爽快感と、ホルンのユニゾンの重苦しさの対比がまるで天国から奈落の底に叩き落されたよう。そこから再び這い上がっていく最後の盛り上がりの素晴らしさ。ホルンの福川さんがノリノリで楽しんでいるのが伝わってくる。

 2、3楽章の美しさにも首を傾げざるを得ない。あれ?こんなにもきれいな曲だったかと。甘いトロンボーンの響き、暖かい風に木々が揺れ、小鳥がさえずるヨーロッパの夏の風景が思い浮かぶようだ。舞台裏で演奏したポストホルンの優しい音色にはとろけてしまった。茶化した感じのオーケストラの演奏との対比がとても面白い。音に色がついているようだ。もう帰ってもいい、って再び思った。

 ペーボさんの声も色気があった。あぁ残念、ステージの横では声がこもる。こっちを向いて歌って~と心の中で願ったけどそうはいかない。もうひとつ残念だったのは4、6楽章は金管の音が外れるのが少し気になったこと。テンポが遅い楽章はやはり難しいのだろうか。昔NHKのドキュメンタリー番組で佐渡さんだったか、小澤さんだったか、バーンスタインさんだったか、遅い楽章をゆっくり振るのは若い指揮者には勇気が要る、と言っていたのを思い出した。考えすぎか。ともかく、ペーボさんも合唱も素晴らしかった。何が、って、オーケストラと一体になっていたから。インキネンさんが創り出す音のバランスなのか、マーラーのオーケストレーションの神業なのか。

 今回改めて感じたのは、演奏を楽しむためには視覚的な効果も重要であるということ。ホルンや木管のベルアップ(木管もそう言うのが正しいのか不明だが)は作曲家(指揮者?)の意図があってそうしているのであって音の効果だけでなく視覚的に「ここは強調したい」ということを伝えているのだと思った。また舞台裏での演奏も遠くで演奏していることを視覚的に感じることで理解が深まる。指揮者の身振りも同じ。日フィルの場合は一体感が伝わること、今回は特に福川さんのノリノリ感が視覚的に伝わること、そんなことがさらに演奏の理解を深め、感動を大きくするのだと思う。

 さて、最後にもうひとつ嬉しかったのは曲の最後、インキネンさんが指揮棒を下ろすまで静寂が保たれたこと。残響がホールの天井に浸み込んでいく(妻の言葉)のが、まさに、見えた。

 今回は感謝。インキネンさんに、日フィルの皆さんに、そして最後まで沈黙を共有してくれたファンのみなさまに。

 いい演奏会だった。

 来週はなんと、妻のリクエストで横浜公演、初めてのカルミナ・ブラーナ。

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